懐かしき昭和を求めて‼︎ 魔法少女ミラクルプリンセス☆妙子たん Another 〜東京ディストピア編〜

@inutika

第1話 メメント盛り

東京の下町に位置する古びたソープランド「メメント盛り」は、その名の通り、どこか古風で、昭和の香りが漂う店だった。時代遅れな外観や、レトロなネオン看板が、時の流れに逆らっているかのようにしぶとく立ち続けてきた。しかし、時代の波には抗えず、ついにこの日が訪れた。


長らく通っていた田中将一は、今朝もいつものように足を運んだ。けれども、今日はいつもと違う。彼にとって、愛すべき居場所だった「メメント盛り」の最後の日だ。田中は薄手の紙袋に花束を忍ばせ、少し緊張しながら、いつものドアを開けた。


「いらっしゃいませ」と出迎えたのは、見慣れた店のママさん。老舗の雰囲気に馴染んだ年配の女性が、いつものように笑顔で迎えてくれる。それでも、彼女の目に見えない影が差しているのを田中は感じた。


案内されると、そこには妙子たん――店の中では『魔法少女ミラクルプリンセス☆妙子たん』という名で知られていた女性がいた。妙子たんは、昔ながらのフリフリのドレスを身に纏い、歳を重ねた肌と優しさの溢れる笑顔を浮かべている。彼女の店年齢は「11歳」と設定されていたが、その実年齢は71歳。顧客たちは、設定された年齢のギャップを含めて彼女を愛し、彼女もまたその期待に応え続けてきた。


「妙子たん……今日で終わりなんですね」

田中は手に持った花束を差し出した。「今までありがとう、妙子たん」と、心からの感謝を込めて言葉を紡ぐ。


妙子たんは、花束を受け取ると、頬をほんのりと染めた。「田中くんも今までたくさんの愛をありがとう」と、少し照れたように笑みを浮かべる。


「でも、熟女ソープが終わるのも仕方ないわよね。だって私なんかより、ずっと可愛い美少女ロボットが沢山いるんだもの。わたしみたいにリウマチで関節痛が酷いせいで、終始マグロな嬢なんてもう……」

彼女の言葉に田中はたまらず叫んだ。


「そんなことない‼︎」

妙子たんは驚きのあまり、花束を落としそうになった。


「田中くん⁉︎」

「妙子たんは確かにマグロで加齢臭が凄くて、おまけに入れ歯で、なんかキスするたびに納豆臭かったけど、そこには確かに肉布団で包み込むような愛があった‼︎」


妙子たんは少し間を置いて、自嘲気味に笑いながら言った。「わたし体重120kgあるしね」


「妙子たんは最高の嬢だよ‼︎」

田中は、全身全霊を込めてその言葉を口にした。彼の真剣さに、妙子たんの目には涙が浮かび、彼女の心の底にあった孤独と後悔が溶けていく。


「田中くん……」

二人は最後に厚い(肉布団的な意味で)ベーゼを交わし、時間が止まったかのように抱き合った。その瞬間、田中にとって「メメント盛り」はただの風俗店ではなく、彼が過去を共有し、傷を癒した場所となった。だがその場所も、時代の変化には勝てなかった。


最後の瞬間、店の中の全員が別れを惜しむように静まり返っていた。全てが終わり、田中は重い足取りで「メメント盛り」を後にした。街は美少女ロボットの広告や宣伝で溢れており、明らかに変わりつつあることを示している。


彼の頭の中には、最後に交わした妙子たんの温もりがまだ残っていた。だが、絶望の影が押し寄せる中で、田中の心には一つの希望が芽生えていた。


「いや、まだだ‼︎」

田中は拳を握りしめて心の中で叫ぶ。「きっと美少女ロボットだらけの風俗街にも、妙子たんのような、わがままボディーなロボットがいるはずだ……!」


彼の脳裏には、妙子たんの柔らかな微笑みと、抱きしめたときの心地よい重みが蘇る。田中は確信していた。必ず、自分のような趣味を持ったロボット開発者がいるはずだと。どこかで、自分の愛する「ババ臭い熟女ロボット」を作り上げた人物が――。


田中は決意した。失った愛を取り戻すため、今度はロボットの中から自分の理想を探し出す旅に出ることを。新しい冒険の幕が、ここに開けたのだ。


未来の東京を舞台に、アツい熟女な嬢を探す田中の奇妙な旅が、静かに動き出す――。

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