第12話 武田軍との激突と撤退命令

武田軍との戦いが始まった。

虎之助は、敵軍の数に圧倒されながらも仲間たちと共に前進していった。

武田軍は圧倒的な人数と優れた騎馬戦術で清洲城に迫っていた。

虎之助の目の前には、武田軍の旗が翻り、戦場には鼓動の音が響き渡っていた。


「くそ、こんなにも敵が多いとは…!」


虎之助は歯を食いしばり、槍を力強く握り締めた。

武田軍の先鋒が彼らの前に立ちふさがり、激しい突撃が繰り広げられる。

敵の騎馬兵が迫り、彼らの剣が空を切り裂いた。虎之助は瞬時に身をひるがえし、槍を突き出して応戦した。


「ここで負けるわけにはいかない!仲間たちを守らなければ!」


敵との衝突は激しく、仲間たちも必死に戦っていた。

だが、武田軍の騎馬隊の勢いは予想以上に強く、次第に清洲軍は押し込まれ始めた。

虎之助も必死に立ち向かいながら、戦場の状況が悪化していることを感じていた。


「このままではまずい…!」


その時、後方から急報が届いた。信長の参謀が馬を駆けて虎之助たちのもとにやってきた。


「全軍に告ぐ!即座に撤退せよ!信長様からの命令だ!」


撤退命令が下された。

武田軍の勢力が予想をはるかに上回っており、このままでは全滅する恐れがあると判断されたのだ。

虎之助はその言葉に一瞬戸惑ったが、すぐに状況を理解した。


「撤退か…だが、ここで無理に戦えば犠牲が増えるだけだ。」


彼はすぐさま仲間たちに撤退の指示を出し、冷静に退却の準備を始めた。

周囲の兵士たちも、戦い続けることの危険を悟り、次々と後方へと退却を開始した。


「撤退するぞ!無理はするな、命を守れ!」


虎之助の声が響き、兵士たちは慌てずに整然と後退していく。

しかし、武田軍は撤退する清洲軍を見て、さらに追撃を強めた。

敵の矢が飛び交い、次々と倒れる兵士たちの姿が目に入った。


「くそっ!追ってくるのか…!」


虎之助は仲間たちを守りながら退却を続けた。追撃してくる武田軍の騎馬兵をどうにか阻止しなければならない。

彼は槍を振り上げ、迫り来る敵に向かって猛然と立ち向かった。


「行け!俺たちが時間を稼ぐ!」


虎之助は数人の仲間と共に、敵の追撃を食い止めるために残った。

敵軍の猛攻を受けながらも、彼らは必死に持ちこたえた。時間を稼ぎ、撤退する兵士たちが安全に後方へ退くための壁となった。

やがて、信長の指示通り全軍が撤退を完了し、虎之助たちもようやく戦場を離れることができた。

彼らは清洲城の安全圏までたどり着き、そこで改めて状況を確認する。


「危なかった…だが、全滅を免れた。」


息を整えた虎之助は、無事に撤退できたことに安堵しながらも、今後の戦いに不安を抱いていた。武田軍の圧倒的な戦力を目の当たりにし、ただの撤退では終わらない新たな戦いが迫っていることを感じた。


「次はどう動くべきか…」


信長が新たな作戦を練っている間、虎之助たちは傷ついた体を癒し、次の戦いに備えることを決意した。


続く


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