世界を越えてもあなたを愛す
坂餅
プロローグ
1
私、
そしてそんな社会人初日の私乗っているのは、学生の頃嫌という程味わった満員電車――ではなく!
なんと、広々ゆったり、落ち着いて電車に乗って通勤している!
心の中で、朝から満員電車に乗って、満身創痍になって出社しているであろう友達エールを送る。
社会人と言えば満員電車ってイメージがあるけど、会社が家からそんなに離れていないから、通勤ラッシュを避けることができた。
学生の頃より遅く起きることができて、人の少ない電車に乗ることができる。
平日は学校、土日はバイト、休みは無い。だけど、社会人になれば、平日は働いて、土日は休むことができる。
私にとったら、社会人になるなんて楽しみで仕方がない。
会社の雰囲気も良かったし、長く働けそうな予感。
浮き立つ気持ちを抑えて、電車を降りる。
降りた駅は高架上にあって、階段を降りて改札を抜ける。慣れない靴を履いているから、踏み外さないように気を付けて降りる。
駅から出るとロータリーがある。会社までの道は覚えている。
歩道を通って、他のスーツ姿の人達と同じ方へ歩いて行く。
しばらく歩いて行くと信号がある、丁度赤信号だから、止まって色が変わるまで待つ。
車通勤の人かな? 私も車通勤、いつかしてみたいな。まずはお金貯めてからだけど。
学生の頃は車なんかに手が届きそうになかったけど、社会人になれば給料も増えて、頑張れば車も買うことができる。
そんなことを考えながら、これからの自分を想像して頬を緩ませた。
――そして気を抜いていたから、反応が遅れた。
遠くに聞えた車のタイヤが擦れる音、気がつけば車は私のすぐそばまで来ていた。周りに注意を払っていたなら避けられたのだろうか? でも、もう遅い。どちらにしても――。
激しい衝撃が私を跳ね飛ばす。頭が真っ白になる、だけどまだ意識はある。ブレーキが間に合ったからだろうか。
身体の自由に動かない。吹き飛ばされて宙を舞っていると気づいてもなにもできない。だけど、まだここまで頭も動いているし、走馬灯なんてものは流れない。だから、私はまだ死なないんだ。痛みに耐えれば生きることができる。これで終わりだとは思わな――。
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