第6話 ワールドダンジョン出現
==カーゼル村==
光輝く柱が出現したのは、異世界から来訪してきた化け物の侵攻が止まった辺りだった。
それは、カーゼル村の近くの森の山の中に突如として出現した。
光輝く柱には、巨大な門が出現していたのだが、ロイは不思議と懐かしさのようなものを感じていた。
「ご主人よ、これはワールドダンジョンと言う奴じゃのう」
デルがちっさい体を威張り散らしながら呟いた。
「一度行ってみるか」
ロイはデルを肩の上に乗せると、ドラゴンアームにかかっている包帯を取り除いた。
緑色の鱗の両手が出現した。
最近ではカーゼル村でモンスター討伐ばかりをしていた。
別の村からやってきた冒険者の話によると、異世界のモンスターがいなくなると、次は化け物のような人間が、いたる村や街や国を攻撃し虐殺の限りを尽くし始めたのだという。
この世界では昔から異世界とのつながりが多かった。
それはロイ自身も知っていた。
だが、これは異常としか言えない現象だった。
光り輝く門を通ると、体がスパークするような衝撃に包まれた。
頭の中に至る映像が浮かび上がる。
そこは見たこともない廃墟の街であった。
だが、普通と違うとしたら。
見たこともない建物だという事だ。
巨大な立方体の建物、四角い乗り物のような物体やら、だが、不思議と懐かしさを感じさせてくれる場所であった。
突如として声が響き渡った。
【ようこそ、ワールドダンジョンの世界の終わりへ】
「なんだ?」
「どうやらダンジョンの声のようだね」
「ダンジョンは喋る物なのか?」
「それは時と場合によると思います。ダンジョンとは世界であり、ダンジョンとは生き物であると母上はよく申しておったのじゃ」
デルが肩の上でそう教えてくれた。
【ステージ① 白虎】
後ろの光輝く門が閉ざされた。
光は霧散して霧のような薄ぼんやりとしてくる。
大地が揺れた。
建物が崩れてくる。
忽然と現れたのは、人間の20倍はあるであろう巨大な白い虎であった。
そいつはこちらを睨むと、ぺろりと舌で唇を舐めまわして、一瞬にして距離を縮めた。
体が吹き飛んだ。
ロイは地面を転がりながら建物と言う建物を破壊してうずくまった。
デルは一目さんに建物の隅に隠れていた。
「白虎ですじゃ、伝説上の生き物じゃのう」
「それってつえーのか」
「うん、神には及ばぬがな」
「殺していいんだろうな」
「もちろんじゃ」
ロイの呼吸が浅く重たくなっていく。
今から殺すと言うイメージを白虎に叩きつけた瞬間。
ドラゴンアームを地面に繰り出し、地面を破壊する。
地割れのようになり白虎に襲いかかるが、そいつはジグザグに距離を縮めては、あちこち移動している。
「あれはなんだ?」
「縮地という能力ですじゃ」
「それ、つえーのか」
「つえーであります」
ロイは地面を蹴り上げる。
土埃が舞い上がり、目の前に跳躍する。
建物という建物を足場にしながら、高速移動で白虎の至近距離に到着する。
だが、白虎は縮地を使用して、ロイの背後に回ると。
ロイはドラゴンアームを即座に自分自身に殴りかける。
後ろに吹き飛ぶ体を利用して、白虎の体に激突する。
白虎は建物の中に吹き飛びながら、ロイは体を落下させながら、落下中の建物を足場にしながら、白虎の至近距離に到着すると。
「終わりだ」
ドラゴンアームの右手に力をこめる。
白虎は縮地を発動出来ない。
激突音が相応しいだろうか、爆発音が相応しいだろうか、一瞬にして白虎の体が霧散していた。
【おめでとう、ステージ①クリア、褒美をくれてやろう、縮地だ】
光り輝く何かが頭の中に入ってくる。
体が思うように動く。
それは縮地という力なのかもしれない。
イメージしただけで、遠い距離の間を縮める事が出来る。
「凄いな」
「この世界の終わりというダンジョンはもしかしたら、能力を与えてくれるダンジョンかもしれないなぁ」
「それは物凄い場所だな」
【ステージ②に挑戦しますか?】
「いや、やめとくよ、少し疲れた」
【では今後の挑戦をお待ちしております】
気づいたら光輝く門の外に出されていた。
光輝く門はずっとそこにあったのだが、普通の冒険者がここにチャレンジしたら死ぬので、冒険者ギルドマスターにSランク級だという説明をしないといけないと思った。
カーゼル村とこのワールドダンジョン:世界の終わりの距離はとても近い。
子供が紛れて入ってしまっても大変だろうから、早急に向かう事にした。
「ブラッドリーさん」
「おう、あの光の門はなんなんだ?」
「あれはワールドダンジョンと呼ばれてる所で、ステージ事に敵が強くなってくみたいです。最初のステージで白虎と出会いました」
「びゃ、白虎だって、あの伝説上のだろ?」
「そうだな」
「た、倒せたのか?」
「倒したが、問題があって、Sランク級だから、人を近づけないほうが良い、普通の冒険者が行くと死ぬと思う」
「だろうな、今すぐにバリケードと門番を設置しよう」
「その方が良いと思います」
その日、普通に宿屋でデルと昼めしを食べていた。
冒険者ギルドの扉が開かれたのはその時だった。
振り返ると、銀色の鎧に包まれた、まるで狼のような鎧だと思った。
そいつはこちらを大きな瞳で眺めると、突然笑う。
「よう、ロイ、久しぶりだな」
「どちらさんで?」
「俺だよ俺、ドーマスだよ」
「ドーマスなのか?」
「おめぇーでっかくなったなー」
「お前はとても強そうになったな」
その時、また扉が開かれた。
そこには軽装のローブのような衣服を着用していた青年がいた。
彼はこちらとドーマスを交互に見ると、ぱあっと目を輝かせて笑った。
「やぁ、ロイにドーマス? それにしても今日はとても暑いですね」
「おめぇ、ドリームか」
「ドリームなのか?」
ドーマスが最初に声をかけると、次にロイが声をかけていた。
3人は再開を懐かしむように、デシカとラシカが作った食事を食べていた。
「それにしても、おめーがドラゴンに選ばれるとはな―」
「ドーマスだって、銀神の鎧? その話が本当なら、もう異世界のモンスターの来訪はこないんだろうけど」
「僕はウェイバリアンとして生きて行こうと決めていたけど、やっぱり君達の友達であるドリームとして生きていくのって楽しいね」
ロイは夢の世界がどのような物なのかはよく分からないが、ドリームが指先1つでコップを浮遊させてしまっている事から、物凄い力なのだと理解する事にした。
「でだ」
ドーマスが声を低くして話し始めた。
「銀神の話によると、この世界が危ないらしい」
「もう既に危ないですよ、他の世界の化物のような人間が侵攻してきていますから、彼等の目的は不明で、ただただ虐殺を繰り返しているだけなのですよ」
「こっちには謎のワールドダンジョンなるものが現れた」
ドーマスの次にドリームが今の他の場所の現状について報告し、最後はロイが締めくくった。
「私として何か物申してもよいかのう」
「ああ、頼むよ」
ロイがそう言うと。
「このカーゼル村は伝説上に存在するメロムとメロカの聖地なのじゃぞ」
「それって、遥か空に旅に出たって奴の話だろ」
「それは宇宙とも言うはずですよ」
ドーマスとドリームが呟くと。
「街の真ん中にあるメロムとメロカの銅像、あれは本物なのじゃ」
「そんなもんあったな」
ロイもそう思った。
最近ではコケと埃にまみれて誰も拝む事も無くなってしまった。
「だから、ここに100人以上のそう簡単には死なない仲間が集まるのじゃ、もう2人も来たではないか!」
「ドーマスとドリームがそれなら、とても頼もしいよ」
「さてと、ドーマスは物に魂を付与出来る六角の文様の持ち主で、ドリームは知恵を無限に貯蔵できる七角の文様の持ち主じゃ」
「なぜそこまで分かる?」
ロイが尋ねると。
「私は何でも知っているが、残念な事に全てではない」
「それは何となく分かるが」
「ドーマスよ、そなたは城壁を作るのじゃ、ドリームよそなたは武器と防具を作るのじゃ、夢の世界にいるザイドロンというサイクロプスを目覚めさせるのじゃ、さすれば夢の中で武具を造れるはずじゃて」
ドーマスは訳の分からない表情を浮かべながら、次にドリームはザイドロン? という小さな声を上げていた。
「さて、本題に入ろうか、ロイよ、そなたは武勇を上げよ、その為に明日、ワールドダンジョンで強化じゃ」
「それは良いけど、人は集まって来るのか?」
「まず強くならねばならぬ、それからじゃて」
デルはいつにもまして饒舌だったが、不思議とそれが本来のデルなのだと思った。
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