素朴なポエム集

Old Boy 老青年

赤裸々な詩

浪人生活という名の鎖に繋がれ、寮と予備校を行き来する毎日は、自由という概念を遠いものにしていった。冷たい壁と狭い空間の中、ただ時間が過ぎ去るのを待つだけの生活。僕を取り囲むその空気は、まるで魂を縛りつける無数の糸のよう。出口のない迷宮であるかのような寮の廊下を歩くたび、心は硬直し、思考も定形化していく。誰もが同じ顔をして、同じ目標に向かって歩む中で、外界は次第に幻のように遠のく。


ある日、久しぶりに寮を離れる機会が訪れた。その時、街の空気が僕を襲った。見知らぬ通りを歩くと、光が降り注ぎ、風が頬を撫でる。ひとりきりで訪れたその自由の瞬間に、街の喧騒や木々のざわめきさえも、どこか神々しいものに感じられたのだ。まるで自分がかつて知っていたこの世界が、長い間冷えきった手に戻ってきたかのように。世界は広く、どこまでも伸びていく青空に、僕は思わず息を呑んだ。人々の影や車の音が、遥か遠くから響く祭りの太鼓の音のように心を揺さぶる。


世界はいつだってそこにあった。けれど、その広がりを味わう自由を奪われた僕には、外の景色はもはや伝説の中の風景。自由というものが、こんなにも美しく儚いものであるとは。それに触れた瞬間、僕は自分が見たものを一つひとつ掴もうとした。儚いその一瞬を、記憶に刻み込むために。僕は思った、世界とは広がりであり、その広がりを意識することこそが、生きることそのものであるのだ。


しかしスクリーンに投影される映画のように、手の届かない場所にあるからこそ、美しく見えるのかもしれない、我々はこの広がりを手に入れようともがくわりには、手に入れた後のことを考えていない、そして真の広がりは誰も知らないただ一人を除いて。

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