オレだけ〝超〟がついてない!

大外内あタり

第1話 オレ、ステータス『0』じゃん!

 佐藤鈴貴さとうすずきは一番後ろで窓側の席に座りながら、外を見ていた。

 最強のぼっちである鈴貴は、寝るかと腕を組んで顔をつけた瞬間、

「うぎゃッ」

 と情けない声を出して、床らしきところに突っ伏していた。

「なん、椅子からおち」

 た、と言いかけて周りをみると、ステンドグラスの風景に玉座らしきところに座っているおっさんとゲームでしか見ない長い杖を持ったおっさんが「おお」と声を出して嬉しそうにしていた。


なんだ、と見渡せば、オレ以外にも何人か同じように首やら腹や身体を擦っている、見知らぬ何人かが、そこにいた。


「おおおお! 今回は九人! 九人もか!」

「成功でございますよ、国王陛下!」

 陛下ァ? まさしくゲームの口調。異世界に来ちゃった時のセリフ。


「ここは、なんだ」

 やっと他の奴らはフラフラと確認できたらしく、声を上げた『国王陛下』様に声をかける。


「あの、こちらは」

 口に出したのは、白に輝く髪に目は虹色で、ちょっと女顔ってゲームの中の人間みたいな男子が、恐る恐る口にする。

「貴方たちは選ばれたのですよ! この国に降りかかる厄災を取り除く勇者です!」

 はぁ、と本当にゲームみたいだ。と思いながら、髪の内側を赤で染めて気の強そうで腹を擦っていた女子が顔を上げて、

「どういうこと……?」

「女性の方々は聖女! 悪魔を屠る為の力を持った麗しの聖女様です!」


 どんどん話を進められて、オレ含む九人は、いやオレ以外はなんなんだ? という顔をしていた。

 そんなオレは、なんだか異世界の転生いや転移? ライトノベルで見たような構図だなと思い、他の奴らを見るとオレ含めて男子が五人。女子が四人。

 それぞれ違う制服を着て、多分同い年くらいだろうと思われる。


「うっ、わあああっ! ラノベの世界だ!」

 眼鏡をかけた男子が感極まったように叫び、周りをキョロキョロ見渡しながら、固まった。

大城たいじょうさん!」

 眼鏡男子が、ひくりと固まり、例の黒髪の気の強い女子を見て固まっている。

「ちょっと降方ふりかた! この状況なんだかわかる訳!?」

 どうやら同級生やなんだからしい。あとの皆の制服はバラバラなので知り合いはいないだろう。


「ふむふむ、みんな元気なようじゃの。大賢者よ」

「はい、九人も集まったのです。それは素晴らしいステータスとスキルをお持ちのはず。では、見てみましょう」


 パッと自分の前に、これまたラノベのようなウィンドウがでて『ステータス』が出てくる。出てきた。

 そして王様やらの前にもステータスが出ているらしく、驚いている。


 オレも驚いた。

 なぜならオレのステータスは『0』だったからだ。


 STR、CON、POW、DEX、SIZ、INT、EDU、APPと書かれた項目のグラフに、数字の欄らしきところが『0』なのだ。スキルが表示されると思われるところにも、何も書いてない。

「はい?」

 確か、こんなライトノベル読んだことあるなって現実逃避をしたけれど、それは国王様の声で雰囲気が変わる。


「な、な、なななんだこれは!?」

 オレは国王様が見ているステータスの裏側から、他の奴らのを見た。

 全員、突出している。

 STRだけ異様に高いやつ、CONが異様に高いやつ。つまり、特化型、いやこれは超特化型だ。


「こんなことってあるわけ?」

 つい口にしてしまった言葉が、みなの顔を集める。

 まさしく、みんなで「どうしよう」という感じなのだ。

「ふ、ふざけるな! なんだこれは! すべてのステータスが高いのが勇者、聖女! なのに……貴様ら……バカにしているのか」


 わなわなと国王様が震えて椅子を殴る。

「ま、待ってください、この状況を教えてくださいっ」

 肩口まである黒髪を揺らしながら可愛い女子が口にするけれども、


「き、貴様ら出て行けーー!」

 と、言われて、兵士に連れられたオレらは今、多分、王都? に入る門前で、なんの餞別もなく立っています。

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