第5話 旅行

…「じゃあ後はロイドを起こすだけね!」


 ん、あとは起こすだけって、昨日言ってた町に行くという事だろうか。


 「ロイド起きて!町に行くわよ!」


 そうして俺は外に出された。


 は、初めて見た。これが…馬車。

 いや、馬車じゃない。何かのモンスターが引っ張っている車だ。


 『この、もんすたなに?』

 「ああ、これはなぁ、ホルトだ。」


 ホルト、四足歩行で足が速そうだ。


 俺は抱きかかえられながら車に乗る。

 この車は周り一帯が見える、とても見晴らしの良い車だ。


 そんな事を考えているとホルトが歩き出した。それと共に車も引っ張られ、走り出した。


 広がる平原、奥の村、いつ見ても綺麗な風景だ。

 前まではよく見えなかったが、この車の上なら高さがあるため色んなものが見える。


 あれは...洞窟?

 山の麓に洞窟が見えた。


 どうにも自然で作られたとは思えない形だ。

 岩で作られているものの、ゴツゴツせず、角がはっきりしている。

 もしかして、あれがダンジョンという物なのだろうか。


 そんな感じで、車は着実に町に近づいてきた。村に近づくにつれて、どんどん町の様子が見えてくる。


 家は、500〜600くらいと言ったところだろうか。どうにも小規模ではなさそうだ。

 父さんが前言っていた、温泉の湯気も少し見える。


 俺は感心した。日本には現代の建築技術を生かしたビルやコンクリートの家などしかなかったから、このような木と石で作られた家は見たことがなかった。


 村から100メートル程のところに、看板が立っていた。


 「ここから道のりをまっすぐ。

 観光の町 エルパッツァ。」


 エルパッツァ、一体どんな物があるのだろうか。

 パカラッパカラッ。


 車が止まった。

 「ロイド、着いたぞ。降りよう。」


 降りると一気に高さが変わり、見晴らしが悪くなった。


 「まずは、宿を予約しましょう。」

 「そうだな。」


 そうして俺は、父に持ち上げられながら町を進んで行った。


 町を進んでいくと、普段見ない物が見られた。

 謎のフルーツ、名物の料理、あと素材。


 そんな物を見ていると、宿に着いた。

 「ここだ。」


 予想よりも遥かに広かった。

 てっきり一軒家の三倍くらいのサイズかと思っていたのだが、実際はその十五倍位だった。


 ドアを開けると、質問が飛んできた。

 「何泊ですか?」

 「2泊で。」


 そのやり取りをした後、店主は慣れている手つきで部屋の鍵を渡され、察しろと言わんばかりに無言で部屋の方向を指差した。


 ガチャ。


 すごい、とても広い。

 ベッドが三つ、大きな本棚が一つ、テーブルが一つ、椅子が四つ。


 それ以外にも、生活に必要なものは大体置いてあった。


 広さは、この部屋だけでそこら辺の家よりも少し小さいくらいだ。


 その部屋に入った後、父と母から少し留守番をするように頼まれた。

 どうやら何か問題が起こったらしい。


 そう頼まれると、親は部屋を瞬時に出て行った。


 さて、これから何をしよう。

 せっかく旅行に来たというのに、親がいなければ何も出来ない。


 ここで俺は一つのことを考えた。


 さっき入ってきた時に本棚があった。

 それに俺はこの世界のことを知らない。

 となるとこの世界での知識を深めてみよう。


 俺は身長が低いため、一段目の本にしか手が届かなかった。

 だが一段目には気になる本がなかった。


 そのため俺は、椅子に登り、三段目まで捜索範囲を増やした。


 ん?「魔法について」か。


 俺は魔法については独学で学ぶしかなかった。

 だからこの本は貴重な存在だった。


 俺はその本を手に取り、床に座った。

 今からその本で知った内容をまとめてみる。


 まず一つ目に、魔法は想像で大体打てるということだ。


 想像なので、火でも水でも、例外はあるものの、色々な種類の魔法を打つことができる。


 次に二つ目、魔法の禁忌について。


 魔法には禁忌と呼ばれる部類の想像魔法がある。

 たとえば即死魔法、魔法を直接打ち消す魔法などだ。

 これらの魔法を打ってしまうと死んでしまう。



 最後に想像力と知能の関係についてだ。


 まず想像力は、言ってしまえば魔力の様なものだ。

 想像力があればあるほど、強力な魔法を放つことができ、想像力がなくなるスピードが遅くなる。

 ちなみに前、俺が倒れてしまったのは、この想像力が切れたからだ。


 そして知能。

 知能は、想像力と共に、必要不可欠なものだ。

 知能があれば打つ魔法の威力の手加減が出来る。

 つまり想像力を制御する力だと思ってもらえれば良い。想像力はあっても、知能がないと、一気に想像力を全部使って倒れてしまう。


 この想像力と知能は、LVが上がるに連れて上がっていく。


 と、これがこの本の内容だ。


        ーーー続くーーー

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