ex3 正しくて可哀想で

 あの日から一週間、学校を休んだ。


 何故あの時涙を流したのか、答えを探すのは早々に諦めた。


 何故って、それを見つけちゃえば、自分が辛くなるだけって、誰よりも分かっているから。


 いろんな人が声をかけてくれた。電子上のやりとりだけど、とてもあったかい気持ちになった。


 それが私を支えてくれる。証明してくれる。


 「正しく」て「可哀想」な私を、作り上げてくれる。


 私が登校したのは、火曜日のことだった。


 もしかしたら、あの一件のことが露見しているかも、という心配も杞憂に終わった。


 私が悪いという話はひとつも出回っていなかった。


 代わりに彼の罪が、噂となって出回ってることを、一週間ぶりに登校した私は知った。


 誰もが「本当なの?」って聞いてきた。だから私は、口をキュッと結んで、下を見る。


 私にとって苦い過去。


 口をつぐんでしまってもしかたない


 私は何も言ってない。


 周りがみんな私を信じてしまうのだ。だから、私は悪くない。


 噂を流したのも私じゃない。誰かは知らないが、誰かが勝手にやったことだ。


 悪いのは私じゃない。


 私の知らない場所で起こってること。言ってしまえば、私だって「被害者」だ。暗い過去を掘り返されてる。


 なんて「可哀想」な、『私』。



 だけど、心配事が一つあった。


 舞華のことだ。


 昨日までメッセージも送ってくれてたのに、今日は一度も話していない。席に座って、私の方には来ようともしない。


 もしかして?


 舞華のことが書かれていた紙も私は知っていた。

 私と同じで、可哀想だと思った。


 だけど、彼女は先週ずっと彼と一緒にいたらしい。


 私を心配していると口では言いながら、彼と会っていたのだ。


 「また、そうやって」


 多分彼女は、知っている。全てを知らずとも、怪しんでいる。


 学校を休む前の私に対しても、そう思われる言動はいくつかあった。


 「なんとか、しなきゃ」


 このままではまた、私は辛い目にあってしまう。


 だから、これは自衛だ。仕方ないことだ。


 都合のいいことに、今日も彼は学校を休んでいるようだ。


 


 大丈夫。私はいつだって「被害者」だ。


 きっと誰かが助けてくれる。

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