雨のち晴れ!

@urushi0527

雲量1 晴れのち雨.1

恋なんてものは所詮一時の感情に過ぎない。

  という信念のもと、俺こと風かぜ隼由真はゆまは高校生活を送ることにした。こうなったのは、全てアレが原因だ。

——————————————————————

 

 相手のことをどう勘違いしたのか、魅力的に思って、好意的に思って、好きになる。そんなものは偽物でしかないし、長続きするものでは無い。自分にとってそれはマイナスなものしか産まない。授業も集中できないし、何をするにおいてもそれが頭から離れない。なんて邪魔なものなんだ。

 人生において恋なんてものは不必要で、邪魔なもの。そうじゃなきゃ、もう耐えられないんだ。そう思うしかなかったんだ。

 そう思うしか——。


「友達として、これからも付き合って欲しい」

 目の前が真っ暗になる。

 俺、今なんて言われた? ああ……そうか。振られたんだ。このどうしようもないくらい重い空気が、それを嫌でも感じさせる。


 友達として、か。どうせ一回も話せないし、話しかけられないんだろうな。もし本当に友達として付き合うなら、気まずくてやっていられないだろう。振られたってことはそういう事だ。

 

 ソースは俺。告白した相手の子に「友達として」と言われた時点で、

「あなたには魅力が感じられず、付き合うことが出来ない」

 と言われているのと同じなのだ。


 告白をしたら、「友達」という関係は二度と築けなくなる。そんなことはよく分かっている。もちろん覚悟は決めてたつもりだ。しかしなぁ、こう振られてみるとどうにも込み上げてくるものがあるな……。

 もうあの日々は戻ってこない。時が刻々と過ぎていく内に、実感が湧いてくる。


 一ノ瀬春華と出会った中学1年生の冬。

 彼女と中が深まってくにつれて、この感情が恋なんだって知らされた。自分の胸がこんなにも高鳴るなんて、知らなかった。どんなに寒くたって、彼女と話す時間だけは暖かかった。彼女といる空間は季節なんて関係ないくらい心地よかった。彼女を取り巻く全てのものが特別に見えた。

 

 俺は彼女と同じ高校に行く為に死ぬほど努力したんだ。所謂恋は盲目って言うやつだろう。それほど俺は彼女が好きだった。心の底から好きだったんだ。そんな初恋が今終わった。短くも長い、この初恋が。


 渡り廊下を歩いて、ふと外を見ると雨が降っている。高1の夏から、こんな気持ちになるなんてな……。


 いいさ、恋愛なんてバカバカしい。

 あんなの、バカどもがやることなんだろ? 俺には無縁の話しさ。恋なんてバカバカしい。恋なんて、恋なんて……。


「クッソ……」

 涙が溢れ出す。人目もはばからず泣いている自分に嫌気がさしてくる。こんな気持ちになるなら、恋なんて……。


「ドンッ」

 痛ってぇ、なんだ? 前を見ていなかったことへの後悔が募る。

「ご、ごめんなさい!」

「いや、こちらこそ……」

 そう言い、彼女は軽くこちらを向き会釈をした。

 

 その顔を見た俺はあることに気がついた。泣いているのだ。軽くなんて言うレベルじゃない。常に拭かないと服がびしょ濡れになるくらいには泣いている。

 

「大丈夫か?」

 さすがに居た堪れず、声をかける。

「大丈夫じゃないに決まってるじゃないですか!」

「そ、そうか……。何があったんだよ?」

 そりゃそうだ。こんだけ泣いてて何も無かったら流石に恐怖を覚える。それ以前に、なんで俺は名前も知らない女の子に声をかけているのだろうか。

「私、私……」

「わかったわかった! もう泣くな! ここで話すのもなんだから外出ようぜ!」

「分かりました……」

 これだけ泣かれると、落ち着いてきてしまった。俺の涙はとっくに枯れており、そんなことよりどうにかして彼女を泣き止ますことを考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る