生姜焼き

第1話 いま

気が付くて　暗闇でパンを食べていた。

このところ毎日そうだ、

深夜のおかしな時間に

半覚醒状態で台所をあさり、気づくと暗がりでもそもそと何かを食べていて、

腹が膨れると睡眠に戻る。

『寝食い』というらしい。

睡眠障害の一種とも言われているが、原因は諸説あるようだ。

眠りは浅い。

1か月前に転勤した。

地方の新しい職場は少人数の事務所で、だいたいは現地のお局様と二人きり

毎日８時間。

悪い人ではない。

少し口が悪いだけだ。

便所メシでもないが、事務所でツラ突合せでご飯を食べる気にもならず

昼ごはんは公園でプロテインバーをかじっている。日中食欲は沸かない。

食欲がガチャガチャになっている自覚はある。

しかし果たしてこれは何科を受診したらいいのだろう。

そして今のところ太りも痩せもしていないからぎりぎり不健康ではないのだろう。

虫歯になったら嫌だけど。

「この子のピークは服用後15分から30分だよ。」

ある日、悪友から「眠れる薬」をもらい受けた。

「ただの睡眠導入剤だから、効かないこともあるかもね、

でも、この子はすぐ眠いピークが来るタイプの薬だから、飲んだらすぐ布団に入ること、飲んでからお湯わかすとか、たばこに火をつけるとかは、火事になるからほんとやめてよね」

闇の薬剤師、ホスピタリティ高い。

「あとは金縛りにあったり、寝入りばなの記憶が飛んだり、副作用は人それぞれだよ、自己責任でね！」

ぐっすり眠れるなら何でもいい。とりあえず飲むとしよう。