第7話 昔話

あの人達は賑やかなフーセンで動物や花をつくる芸人さんのところへ行った。

お孫さん達ははしゃいでる。

あちこちのブースで食べ物を買ったり、子供向けのゲームコーナーを回っていた。


やっぱり無理か、、。

そうよね。

あの人はここで家族との思い出作りに戻ってきたのだもの。

ビールが苦いな。


ヤケクソみたくなって二杯目のビールを買いに行こうと芝生から立ちあがろうとしたら、

あの人の孫の赤ちゃんがぐすり始めた。

それで、奥さんと娘さんとお孫さんは

帰って行ったの。


えええ、、、。

神様、ハロウィンのかぼちゃさま、ありがとうございます。

あとは私の勇気。

頑張れ、わ、た、し。


丁度いい具合に、夜も更けて音楽会は

子供向けのアニメの曲なんかから大人向けの曲に変わっていた。


あの人が所在なさげに芝生に歩いてきた。


「ここ、いいですか?」


「ええ、どうぞ、、。」

いいわよ、いい、いいですからー。


「いいハロウィンですね。

僕の子供の頃にはこんなのはありませんでした。」


「そうですね。年末には餅つき大会がありましたけど。」

ばかばかーーっ。もっと艶っぽい話しなきゃダメじゃないの!


「ええ、そうです!覚えますか?嬉しいなぁ。

餅つき大会は米屋さんのおじさんが張り切ってて、いつだったか張り切りすぎて、ぎっくり腰になっちゃった。」


「そうそう、あははは。

さあ、いくぞー!って杵を振り上げたら思ったら、動けなくなっちゃって、、、。」

あはははって、お里がしれるつうの。


「あはははーー。そうだった。あの時に大人は

大騒ぎになったんだけど、子供達はおかしくて

皆んなでゲラゲラ笑って叱られたんだった。」


あ、この曲、チーク トウ チークだわ。

相手がいる人達が手を取り合って、ダンスし始めてる。

踊りたい、この人と。

どうしよう、恥ずかしい。

でも、今日のこの日を待ってたんでしょ!

この日の為に衣装も買ったんでしょ!

やれ!私!後悔するぞ!


「あ、あのう、その、、。

もし、ご迷惑でなければご一緒に踊って頂けませんか?」

きゃー、恥ずかしい。


「ジャスですね。

懐かしい、さあ、手をどうぞ。カルメン。」


びっくりしてアワアワしながら手を出した。

大きな手だった。

あの人に引かれて広場の真ん中に立つ。

そして、体を合わせてチークダンス。

夢のよう。

あの人の顔がこんな近くにあるなんて。

背が高い。

いいにおいがする。

し、あ、わ、せ。







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