第5話 期待は広場にある

あ、広場の向こう側から歩いて来たのは、

あの人だわ。

奥さんと小さな子供さんを連れている。

後ろからは娘さんなのかしら?

赤ちゃんを抱っこしながら一緒に歩いてる。


そうよね、当たり前だわ。

大学に入る為にこの町を離れてたあと、

そっちで就職したって、結婚もしたって

同級生のナオコが教えてくれたじゃない。


最近になってあの人がこっちに戻ってきたとナオコが教えてくれた。

どうも良くない病気で、ここでの暮らしを

決めたらしい。

聞いた時には驚いたし、気になって仕方なかった。

彼の家は知ってたから、なんとなーしに

散歩コースにしちゃった。

そっと彼を見た。

老けたわね、でも面影が残ってるわ。


ハンドボール部の花形選手で頭も良かったからの女子の憧れだったもの。

がっしりと筋肉がついた体は、、、。

今は一回り小さくなっていた。


彼は猫を飼っていた。

猫にハーネスを付けて一緒にお散歩。

猫と散歩なの?

うちにも猫がいるから嬉しかった。


何気なく隣をすっと通り過ぎる、ただ、それだけで胸が高鳴った。


それだけで良かったのに、、。



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