両片思いの幼馴染をエッチな目で見てる男の子とわからせたい女の子
ペンギンさん
第一章 幼馴染をわからせたい!
第1話 弟じゃないが?
『コタ、ちゃんと手を繋いで!』
俺、
『コタ、ご飯作ってあげる!』
お互いの家を行ったり来たりしている内に、お互いの家が実家になってしまったと感じるくらいの関係だった。
『コタ、お風呂に入るわよ』
それにしたって、菜奈は面倒見が良すぎる女の子だった。それこそ、一人で何もできないと、俺が恥ずかしがるくらいに。
『コタ、お風呂に──』
『菜奈、流石に恥ずかしいよ』
だから、そう言って断ったのが、小学6年生の時。
少しずつでも、自立しなきゃと思った年頃。
ただ、それは俺の姉貴分を気取っていた菜奈にとって、相当な衝撃だったみたいで。
『お、お姉ちゃんとお風呂に入れないっていうの!』
『別に菜奈、俺の姉ちゃんじゃないし』
『私の方が背が高いけど!!』
『クラスの女子、みんなそうじゃん』
多分、菜奈が俺のことをいつも気にかけてくれてたのは、俺の背がいつまで経っても小学校低学年のままだったから。
だから、護ってあげないとって気持ちになってたんだと思う。弟って、菜奈にとっては庇護対象みたいだし。
『ふ、ふんだっ、コタのバカ!
一人で背中洗えないくせに!!』
『練習するし、ちゃんと洗える様ななるから!』
とにかく、ずっとくっ付いているのが恥ずかしくなって、少し距離を置こうとしたのがこの時期になってから。
何をするにもくっついていた菜奈は、ことあるごとに反発を繰り返した。
『菜奈、手を繋いで登校するのやめよう』
『な、何のつもりよ!
交通事故で、コタが死んじゃったらオバさんになんて言えばいいの!』
『……死にました?』
『言い訳できてないじゃないっ!』
『菜奈がいなくても普通に出かけられてるし、問題ないよ』
『問題しかないの!
コタのクセに、反抗期なんてナマイキ!』
『……菜奈がくっ付いてるせいで、友達ができにくいんだって』
その度に必死に宥めて、少しずつ距離を取っていった。近すぎる距離を適切に、近すぎず離れ過ぎず、大切な幼馴染としての距離感を探して。
そうして独り立ちしようとしたからか、中学からは身長が伸び始めて、男友達も数えられるくらいには増えた。
けど、それと一緒に、一つのよく分からない感情も俺の中に芽生え始めてた。
……どうしてだか、菜奈の所作が気になり始めたんだ。
一緒に登校している時に、サラサラと揺れている長い髪。
運動している時に、汗を拭う所作。
いつも話しかけてくれて、誰よりも近い場所で笑っていてくれる女の子。
菜奈のことを考えると、何か分からないけどドキドキしてしまう。
落ち着かなくて、ソワソワしてする。
それが何か、ネットで調べてみれば"もしかして→恋?"とかふざけたサジェストが出てくるんだから本当にネットはいい加減だ。
わざわざ距離を取ったのに、菜奈に恋なんてしてたらバカすぎるし。
もっとネットを探せば、答えは見つかるだろうかと深掘りしていって、それで……。
つい読み込んでしまったネット小説に、"そんなものは愛欲による生理反応でしかない"とか何とか、書いてあったことで、俺は気が付いてしまった。
もしかして、俺って菜奈のことエッチな目で見てるのか!?
……どうすれば良いのかな、俺。
「菜奈、今日から別々に登校しようって考えてるんだ」
高校への通学路でそれを聞いた菜奈は、急な提案に黒色のポニーテールを揺らしながら動揺を隠せていなかった。
「ど、どうしたのよコタ!?
そんな急に、イジワルなこと言って!」
あれからたくさん悩み抜いて、結局俺は認めるしかなかった。
自分がエロい目で菜奈を見ているに違いないことを。
でなければ、あんなにドキドキしたり、ソワソワしたりすることはないはずだし。
自身がエッチなのを自覚してから、俺は徹夜明けに結論を出した。
──変な目で見てるってバレて、菜奈に嫌われたくない!
だから、またいつかの時みたいに、菜奈と距離を取ろうとした。
素直に、菜奈でムクムクするからヌキヌキするね、なんて絶対に言えないし!
というか、ヌキヌキしたら顔を合わせられなくらるから、絶対にするわけにはいかない!
意識しないように、何とか距離を取らなきゃダメなんだ。
「もしかして誰かに、”あいつ、あんなに可愛いショタなのに女と登校してるぞ。俺達男と一緒にいれば、イイコトしてやるのになぁ”とか言われちゃったの!?
ゆ、許せないわ、私の可愛い弟分になんてことをっ!!」
「言われてないよ」
菜奈は中学校に入学する前の、今日から手を繋いで登校するのやめない? と提案した時くらいに取り乱していた。あの時は、毎日家に遊びに行くってことで、手を打ったんだっけ。
ていうか、やっぱり未だに、俺のこと小さい男子だって思ってるんだ。
背、そんなに違わなくなってきたのにな……。
なんか、少し傷つく。
「じゃあ、どうしてよ!」
ツリ目気味で、人によっては怖いって思われちゃうらしい目を怒らせながら、菜奈は俺を睨んでいた。
いつも優しかった菜奈に睨まれたのは久しぶりで、思わずビクッとしてしまった。
「えっとですね、それはですね……」
慌てて言葉を手繰ろうとしたけど、事前に用意していたセリフが見事にすっ飛んで、思い出せなくなっている。
それでも、何とか脳内から捻り出して出てきた言葉は……。
『菜奈と歩いてると、風でスカートが揺れた時、中のスパッツをガン見しちゃってさ。……ごめんね』
『菜奈の隣で歩いてると、最近になって良い匂いが気になって落ち着かなくてさ。……ごめんね』
『菜奈の後ろで歩いていると、ポニーテールが揺れてて、思わず触りそうになっちゃってさ。……ごめんね』
どれもこれも、ロクな言葉じゃない!
ていうか、素直に変態過ぎるよ!!
こんなこと伝えたら、ドン引きされた挙げ句に動物病院に連れて行かれ、その場で去勢されかねない。
それは困る、大変に困るから。
「ご、ごめんね!」
「あ、ちょっと!?」
ごめんねだけを切り取って、菜奈を置いて俺は全力疾走で学校へと登校してしまっていた。
久しぶりの一人での登校は、必死過ぎて感慨なんて覚えてる暇は無かった。
……放課後までに、素直すぎる理由にオブラートを包んでおかないと。
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