第5話
「おい。相馬〜」
健成が休み時間に僕の所へやってきた。
「どうした?健成」
「いや〜、相馬がなんか元気ねぇなぁって思ってさ」
「あ…」
どうやらバレていたようだ。けれど健成って人当たりも良くて優しいし、顔も結構いい。おそらくモテてるんだろうなぁ。
でも、転校して2日がたったけれど健成が男子と話しているところは見るけれど女子と話しているところは見たことがないなぁ。
「ちょっと考え事してただけだ」
「寂しそうな顔をしていたけど大丈夫か?」
「あぁ。大丈夫だ」
「ならいいんだが」
「心配してくれてありがと健成」
「おぅ」
そう言って、健成はガッツポーズをして教室を出て行った。
健成のおかげで少し元気になり、時間は順調に進んでいった。
と、思っていた。
これから起こる不幸はまだこの時は、知らなかった。
「相馬〜!約束してた学食行こ〜ぜ!」
「おう。行こ〜」
僕は、学食で健成のおすすめのメニューを教えてもらい、学食から教室に戻るその道中。なぜか廊下が慌ただしかった。
それは僕達の教室に行くにつれて騒がしくなっていった。
「新庄先輩が夏秋さんに告るらしいよ!」
「え!まじ!?新庄先輩ってあの新庄先輩!?」
「そう!去年の被服部主催のイケメン大賞で最優秀賞だったあの新庄先輩!」
「あの人ね!どうなるだろうね?早く行こよ」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙…。俺達の夏秋さんがァ」
「終わったな、新庄許さない…」
女子達は黄色い声を上げながら僕達の教室に向かって走っている。対して男子達は悲しみのどん底のような顔をして教室から離れるようにして廊下を女子と逆向きに歩いてくる。
「夏秋さんどうするんだろう?相馬、お前大丈夫か?」
「ん???なんの事かな?」
「いえ。なんでも」
なんだこの胸のモヤモヤは。いや、きっと気のせいだ。
教室が見えてきた。
「「「「「え〜っ!」」」」」
大勢の叫び声が聞こえた。
どうなったんだ!?
僕達は、慌てて教室の中を見た。
!?
イケメンの男子生徒が涙目で、四つん這いになっていた。
「まさか新庄先輩が振られるとはね〜」
「びっくりだね〜」
「新庄先輩、カッコイイのになんで?もっとカッコイイ人がいいの?サイテーね」
「それな〜」
付き合うことはいいことだけれど、新庄先輩ってヤツがフラれたことに対してホットしている自分がいる。
「あら相馬くん。私の顔になにか着いていますか?」
「いや、大丈夫だ」
「そうですか。良かったです」
「え、夏秋さんが微笑んでるだと!?(か、かわいい、)」
「(それな!)」
「(誰だあいつ)」
「(転校生だ)」
「(くそぉ!)」
「(あの人前髪で顔が隠れてるけれど結構イケメンじゃない?)」
「(え?ほんとだ!)」
「(覚えておこう)」
なぜか、みんながもっと騒がしくなった。
何話してるのだろう?少し離れていて聞こえない。おそらく、新庄先輩ってヤツがフラれたことについてだろう。[※本当は相馬のことだった]
「おい、あんた気安く俺の夏希と話してるけど誰だよ」
え?今なんて?俺の夏希?フラれたんじゃねぇのかよ!
「あなたは、何言ってるのですか?そろそろ気持ち悪いですよ?」
「ぐはッ」
そう言って新庄は、その場に倒れた。
これはキツい、可愛い人にこんなにストレートに『気持ち悪い』と言われたらさすがに僕でもこうなるわ。お疲れ様です。来世では頑張って下さい。
そう心の中で言って僕は新庄先輩に向かって合掌をした。
「相馬くん。どうしたのですか?」
「いや、なんでもないよ夏秋さん」
「そんなことよりこの、新庄先輩?とはどういう関係なの?」
「ん〜、ストーカー?では無いか、ナルシスト?に近いかな?付き合ってもないのに『結婚してください』とか言ってきたのよ?少し引いてしまいました」
「ははは…」
顔は凄くいいけれど中身が、中身がちょっとイカれてる…。どうやって生きたらこんなに自分に自信を持てるんだ?
あっ!新庄先輩は、ムクりと起き上がり僕の目の前に来た。
「あんた名前は?」
「河上 相馬ですけど…」
「相馬…」
「は、はい?」
「夏希は渡さないからな!」
そう言って新庄先輩は、走り去ってしまった。
「何だったんだ…?」
「恋のライバル…、素敵〜!」
「これからどうなっちゃうんだろうね!」
「(くそォ、敵が増えてしまった)」
「(最悪だ…)」
またしても廊下で見ていた人達はボソボソと何かを話している。
「やっと新庄先輩どっかに行ってくれました。相馬くんっ!ありがとうございます。相馬くんが来てくれなかったらもっと絡まれるところでした」
「役に立てたのなら良かった。転校してからお世話になりっぱなしだったからな」
「私は何もしていませんよ?」
「いや、色々と助かっている」
「よく分かりませんが、良かったです。(今度今日のお礼をさせてください)」
「(今日のお礼?そんなのいいよ)」
「(いえいえ、私が良くないのです)」
「(マンションの近くに美味しいケーキのお店があります。そこで、何か1つ奢らせてください)」
遠慮してもどうにもなりそうになさそうだ。
「(わかった。お言葉に甘えて何か一つ奢ってもらう)」
「(はいっ!任せてくださいね)」
そう言って夏秋さんは微笑んだ。
「「「「「(かわいぃ〜)」」」」」
なぜか廊下から見ていた男子たちの表情が一瞬優しくなった気がした。
どうしよう、夏秋さんとケーキを食べに行く約束をしてしまった。どうしよう…。僕は、浮気はちょっと…。
ん?今の僕、結構新庄先輩みたいになってた気が…。よし!ケーキ楽しみだな。ははは…。
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良かったら、☆☆☆を★★★にしてください!
お願いしますっ!(土下座ー!)
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