悪魔の羅針盤

ニートの誇大妄想

終焉

人生の意味とはなんだろうか、俺は今標高1800m程の樹海にいる、そして 羅針盤を頼りにこの前人未到の山を登り続けている一人さ、なぜ登っているかってこの山の上に行けば行くほど金と爵位がもらえるからさ、爵位があれば女は選びたい放題、金があれば一生安泰だ、心が躍るだろ、そういうわけでこの前人未到の山を登っているのさ、さっきから羅針盤を頼りに進んでいるが、視界が霧に覆われて足元すら見えない、今日はそろそろ休も、「あーー」、足が滑った、鼻の奥で血の匂いがする、痛いはずだが雪のせいで何も感じない、…、この感覚、どこか懐かしいい、どこかで、、、そうだ子供の頃に酷い熱を出した時に、なんでだよ、これまでしまいこんでいたものが一気に溢れ出てきた、俺はもう死んでしまうのか?「うわー」、命綱の羅針盤が破れてしまっていた、怪我は酷いが治療できるほどだった、だが羅針盤が動かない。羅針盤が動かないままで…この霧の中で生き残れるはずがない、もうここで終わりなのか?と言う考えが頭の中をよぎる、絶望感が大きくなっていくと次第にボーーとしてきた、私はそこで気を失った、何時間程が経っただろうか、霧も晴れ、東の彼方からもいつものように私たちを祝福している、俺がこんな状況になっているというのに、鳥のさえずりが祝福をより一層強めていく、あまりの美しさからか、迫り来る死への恐怖からか、どちらからか、またどちらもか分からないが涙が溢れ出してきた、俺はどうして目指していたのだろうか、雄大な朝日の前で小さな私は自分の欲望を恨み始めた、どうして目指していたのだったか、そうだ、最初は…楽しかったんだ、ただ楽しかったから登っていたんだ、ただ生えているだけの植物、泳いでいる魚、親子で歩く猪、ひなを守る親鳥、ひなを狙う蛇、どれも新鮮で、そんな何ににもならない物を見るために俺は、山に、何が欲しかった訳でも何かを目指していたわけでもない、なのにいつからだろうか他人からの見え方を気にし始めたのは、いつからだろうか目の前のことではなく先のことを見るようになったのは、馬鹿にされてたって楽しかったじゃないか、あの時は生きているだけで幸やわせで、それ以上の事は何も求めていなかったというのに何に導かれたのか、祝福が雪を溶かし、、赤い氷も溶け、流れていく、もし、もしもつぎがやってくるなら、こんな悪魔の羅針盤なんて。

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