†銀髪の居城† -condemner of heart-
凧揚げ
プロローグ
『カーアラーン監獄』
100年の歴史を誇るこの刑務所から、未だかつて誰一人として脱獄した者はいない。
鬼の紋章が刻まれた場所――そこは**「地獄門」**と呼ばれ、脱走不可能な牢獄として悪名高い。
夜な夜な塀を見上げ、唸り声を漏らしながら人生を悔いる囚人たち。看守の憂さ晴らしの標的とされ、悲惨な境遇に嘆く死刑囚。そして、無期懲役を言い渡され、ただ暇を持て余す者たち――。
あらゆる規則と習慣が、この不吉な舞台に集約されていた。
そんな中、虚ろな目をしたひとりの女性囚人が、ポツリと愚痴をこぼす。
「退屈だわ」
毎日、そればかりを呟いていた。
◆◇◆◇看守たちへ
一方、監獄内では「お遊戯会」と称された奇妙なイベントが行われていた。
ダーツボードの枠内には、**『1〜20』**までの数字が、粗末な紙に書かれて貼り付けられている。次々とダーツが投げられる中、ひとりの青年が面白くなさそうに眉をひそめた。
刑務所暮らしも3年目。独り立ちし、規則に縛られる日々にうんざりしていた。
「こんなゲーム、つまら――」
そう言いかけた瞬間、秒で取り押さえられた。
「馬鹿なことを言うな」
――3年前。
ある言論闘争を経て、この監獄では**「上からの命令は絶対」**となった。些細な文句すら許されない。
ムキになった青年は、スッと立ち上がり、ダーツを掴む。そして、力の限り投げた。
突き刺さったのは『1番』。
ズカズカと歩み寄り、ベテラン看守に詰め寄る。
「『1番』の名前を教えろ」
だが、返ってきたのは、ニタニタとした笑みだけだった。
情報は得られなかったが、ただひとつ分かったことがある。
――『1番』は美女らしい。
ウブな心に、淡い期待が芽生えた。
◆◇◆◇女性囚人へ
『1番』の女囚、無期懲役の受刑者。
白髪の女性が、ひとり。
彼女は3年もの間、暗闇の牢に囚われていた。目隠しをされ、何も見えない。
唯一の楽しみは、食事の味を噛み締めることだけ。
だが、彼女の心には**「ある決意」**があった。
――過去の過ちから、決して逃げないこと。
何度も繰り返された、月の晩。
彼女は、静かに『反撃の狼煙』を上げる時を待ち続けていた。
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