第19話 肉詰めピーマン
「ピーマンは苦いから好きではない」
ぶすっと膨れっ面でそう言ったのは煮物に入ったピーマンを避けるフェリクスだった。
「殿下、好き嫌いしてると大きくなれませんよ?」
困ったと言わんばかりに眉尻を下げたアデルハイドにそう言われて顔を真っ赤にしたフェリクスがビールを煽った。
「子ども扱いしないで貰いたいね」
「ピーマンが嫌いなんて子どもでしょう」
本心を言えばアデルハイドも苦手なものを無理に食べろとは思っていない。
美味しく食べれる人が食べればいいし、栄養だって他で補える。
けれど一応は王子であるフェリクスが国民が作る農作物をアレルギーでもないのに食べないのは外ではありえない。
という依頼をフェリクスの兄である王太子殿下から受けているのだが、フェリクスは膨れっ面のままピーマンには箸を付けない。
「アディが僕のためにピーマンを使った何か作ってくれるなら食べるかもしれないぞ」
思い付いたとばかりに目を輝かせるフェリクスに「やっぱり子どもじゃない」と思っても言えないアデルハイドだった。
気を取り直し、肉ダネを作る。
ひき肉は合挽き肉にしたいところだけど、ミンサーがないので今日はすぐに準備が出来るツクネ用に細かく切ってある鶏肉を使う。
牛乳にパン粉を浸し卵を入れて混ぜておく、玉ねぎは細かい微塵切りにひき肉と玉ねぎをパン粉を浸したボウルに入れて捏ねていく。
味付けは塩と胡椒でシンプルに。
ピーマンは縦半分に切って中綿と種を取り除き中側を上に並べていく。
粉ふるいを使い片栗粉を満遍なく振りかけて肉タネを盛り上がるくらいにピーマンに詰めていく。
熱したフライパンに肉を下に向けて焼いていく。
肉の表面が焼けてきたら蓋をして中までしっかり火を通す。
肉詰めピーマンを皿に持ったらピーマンを焼いたフライパンにトマトペースト、ニンニク、醤油、塩胡椒を加えて煮詰めていけばソースが出来上がる。
盛り付けた肉詰めピーマンにソースをかけてフェリクスの前に置いた。
「物凄くピーマンだね」
「これなら見た目ほどピーマンの匂いや苦味はしないはずよ」
そう言いながら取り分けたピーマンをカプリと一口齧る。
ジュワッと肉汁が染み出しトマトのソースと絡んでピーマンの甘みがアクセントになっている。
ギュッと詰まったひき肉の旨味がビールに合う。
「んービールが美味しいわ」
アデルハイドを見てソワソワとしながらフェリクスが肉詰めピーマンに齧り付くと目を丸くした。
「うん、苦手な匂いがほとんどしない、寧ろピーマンの青い匂いが肉汁の多いひき肉を引き立ててくれる、ああ確かにビールが美味いね」
ニコニコと出した肉詰めピーマンを完食したフェリクスに「やっぱり子どもじゃない」とアデルハイドは声に出さずに笑った。
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