17:第八位『大』
灰色灰色灰色稀に緑とやっていたら、ついに神力が10万に達した。
自動的に階位が上がるとは聞いていたけれど、こんなに静かにそしてあっさりと上がるとは思わなかった。なんの感慨もないとはこのことだ。
一応階位が上がったので、三姉さまのところへ報告に来てみた。
四姉さま?
下神の統括は
「あら『月』、あなた……
そう階位が上がったのね。おめでとう」
「ありがとうございます」
「わたくしもかなり早かったのだけど、フフッ抜かれちゃったわね」
笑顔怖っ、せめて目も一緒に笑ってくださいよ!
「質問です、四姉さまはどうしましょう」
「どうしましょうもなにも、階位が並んでも『勝利』には遠く及ばないのは判っているでしょう? 姉は姉、いつまでも変わらないわよ」
それは判ってますって。
「そうではなくて、伝達をお願いしても?」
「あらこういうことは本人の口から言わないとね」
三姉さま絶対面白がってますよね……
一でもなく四でもなく三。中途半端から始めたわたしが悪いんです。
改めて上から……
いや一姉さまは怖、じゃなくて恐れ多い。二姉さまのところへ行こう。
留守だった。
豊穣ちゃんなら喜んでくれそうだが、それより後ではもう言い訳もたつまい。わたしは仕方なく四姉さまのところへ飛んだ。
「……」
転移するや、無言でじっと睨んでくる四姉さま。
んんっ四姉さまですよね?
ああ神性を得て姿が変わったんだっけ。『勝利』になりたてで姉妹全員が集まったとき以来なので、完全に変化が終わったその姿は初めましてですね。
以前の〝戦〟が強かったときは火の神性が強く出ていて赤い髪だったが、今はなんと光帯びた濃い目の金髪だ!
さらに長さだって、肩にかかるかどうかの動きやすそうな短さから一転、腰まで伸びて、伸びた髪は三つ編みにされてひと房に。
衣装というか装備は相変わらず鎧のままだが、色や素材はまるで違っている。鉄や革丸出しの武骨な奴から、白銀に金斑でキラッキラに! 剣は槍に変わり、槍も実用より化粧っ気が強いのか旗のようなものが巻き付いている。
傭兵紛いの赤髪の女戦士改め、凛々しい金髪の女騎士! やばい。四姉さまなのに恰好が良いとか反則じゃん?
「質問していいですか?」
「ッ! なんであんたが先に質問すんのよ! 聞いてるのはこっち! さっさと要件を言いなさいよね!」
いやあんた無言やったやん。
なんも聞いてないでしょ……
そんなことは億尾にも出さず、なるべく平静を装いつつ昇格したことを告げた。
「そ。良かったわね」
うーんおかしいなぁ。祝い事のはずなのに三姉さまのときからずっと空気が重い&悪くないですか?
姉ならもっと喜んで! 優秀な妹を褒めて伸ばして! 褒め散らかして!
空間が僅かに揺れる。
以前は感じられなかった細かな揺れ、二姉さまの転移だろう。
「あ~『月』、居た居たぁ
さっきウチんところに来たよねぇ何だった~?」
転移の痕跡でも残っていたのかな、わたしの転移はまだまだ雑だ。
「実は先ほど第八位に上がりましたので報告に行ったんですよ」
「そっか~早かったね、おめでとっ!」
じゃね~と言って二姉さまは消えた。
軽っ!
確かに空気重いわー悪いわーとか言ってましたけど、そう言うのは望んでないんですよ。
「へー三姉と二姉の方が先なんだぁー」
ほらね、さっきより空気重くなったじゃん!
どーすんのこれ。
「えっと統括の三姉さまには真っ先に伝えなきゃと反射的に動きまして、でもですね、実はこう言うのって上からじゃないかと遅まきながら気づいたんですよ!
とは言え一姉さまは恐れ多いので、二姉さまのところへ行きました。ごめんなさい」
「言い訳はいらないわ。
いーい階位は並んだけど、まだまだ抜かせないんだから!」
「いや抜けませんって。四姉さま、めっちゃ遠いじゃないですか」
何なら『勝利』になってから、持ち前の
「……」
しかし返事は無かった。
続く沈黙。
帰っていいかな。いや、もう帰らせてください。お願いします。
「……質問しなさいよ」
「質問?」
「聞きたいことあるんでしょ!?」
くわっと四姉さまが目を見開いた。
ああ。そういえばそんな事言ったわ。
「『勝利』の姿になって初めてお会いしましたよね。
その白銀の煌びやかな鎧、凄くないですか! これ着た女神が降臨してきたら、そりゃあ勝利を確信しますよね!
というのはわたしの個人的な感想としまして、あのぉ……その姿、すごぉくわたしと親和性が高い気がするんですが気のせいですか?」
ゾクゾク、ガクガク。気になるけどどこか怖いそんな曖昧な感じ。これは光か陽が入ってますわー
「気のせいじゃないわよ。
智神から頂いた【機能】で〝勝利〟になったんだもの」
「も、もしかして〝太陽〟の権能が?」
「まさか。あーしはその切れっ端だけよ」
月の対、太陽。切っても切れぬ関係だが、あちらが主でこちらは従なのは理により定められている。
〝必然〟なんて権能はないから、太陽に関する何かを得たのだろう。きっとそれは光に関することで、その力が強すぎて火っぽい要素はすっかり消えて、キラッキラになったと。そしてそれはわたしを誘惑し恐れさせる。遠くに行きたいが近づきたいような不思議な気分。
「なんかわたしと並ぶと騎士が娼館に迷い込んだみたいですね」
白銀の騎士と
「馬鹿じゃないの!?」
なにがツボに入ったのやら、四姉さまは興奮で頬を染めながら笑み浮かべた。
我が姉ながら理解不能です。
やっと帰ってきて、一息ついたときに気づいた。
わたしが感じていた親和性、あれって互いに感じるものなので、四姉さまもまた同じだったのではと。
ほぉほぉこれってしばらく使えそうじゃない?
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