おやすみなさいなどと言いたくもない②
「みんなどこいったの」
母の言うみんなが誰なのか、私は知らないし見たこともない。
母だけが認識するその人達は、母本人すらどこの誰だか分からないという。なのになぜか母はどこにいるのかを執拗に知りたがる。それらが大事な人達であるように。
母のいうみんな。
私にはどこの誰だかは分からないが、どこにいるのかは分かる。
「帰ったんじゃないかね」
お母さんの中に。
だってお母さんの一部だろうからね。
母にとっての現実と、私にとっての現実が違う。
だから否定も肯定も出来ない。
たとえ母の中に、母の言うみんなが、本当はぎっちり詰まっているのだとしても、どうせ私に見えやしない。
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