妻は艦隊司令官!
小日向葵
プロローグ
僕の名はレイジ。地球は狙われている
……そうして始まった物語は、平凡な高校生であった地球人の僕・長戸零士と、その地球を守るために銀河の彼方からやってきた宇宙艦隊司令官、キツネ耳の美少女セフィアリシス・メルテリアラウス・コムスククレス・マハリマの結婚という形で一旦幕を下ろした。
だがしかし、結局のところそれって僕周辺の事情が色々とあれしただけであって、惑星規模での侵略危機については全く解決していないのだ。
改めて言う。僕の名はレイジ。地球はまだ狙われている。
かつて宇宙のほとんどを支配したダグラモナス帝国は、苛烈な支配と浪費により自滅に近い形で倒れた。帝国の跳梁を許した反省から、その後成立した宇宙連合政府は合議制を採り、緩やかな連帯にて直接の統治は各惑星政府に任せることとした。
しかし、帝国残党による破壊・侵略行動は宇宙連合未参加星系を対象として行われ、まだ自らの力で宇宙に出ることのできない文明がいくつも滅ぼされてしまうという事態が発覚する。
時の連合大統領は、この事態に対抗し得る者は自分達しかいないとし、対抗するための『力』を派遣することを検討した。
迎撃艦隊という概念の誕生である。
防衛対象とのスムーズな意志疎通を狙い、艦隊の構成員は同一星系の同一人種とされた。敵性国家による攻撃には、一般軍が対応する。反体制組織による連合領域内の大規模破壊活動には、同時に組織された遊撃艦隊が応ずる。そして迎撃艦隊が整備され、内と外とに対応する体制が整った。
こうして、宇宙連合とダグラモナス星雲人との長きに渡る戦いが始まったのだ。
長く放浪の集団だったダグラモナス星雲人の集団はつい最近、銀河の果てM521星系に本拠を得て帝国の再建を宣言した。その動きに呼応し、宇宙連合を組織して来た一部の惑星国家から、連合を離脱し帝国に合流するものまで現れてしまった。かつていくつもの銀河を強大な科学と武力で蹂躙したダグラモナス帝国、その復活に万歳を叫ぶ人々がいるということ自体、僕の感覚からは理解できない。しかし、僕が知識として知る帝国の暴虐が誇張されたものであったり、捏造である可能性も否定はできない。だって一万年以上も前の話の真偽なんか、まだ二十歳にもなっていない僕に判るはずもないじゃないか。
日本の歴代天皇だって、最初の方は神話になっちゃってて実話なのかファンタジーなのか区別が出来ない。事実を元にしたフィクションかな?というのが僕の感想だ。
宇宙連合は、帝国を打倒した後に作られた政治組織で、帝国への反発からか自由と正義、そして平和を標榜する星間国家連合体だ。高度な科学技術と資本主義、そして人権への思想。理想的な社会と思われるこれを捨ててまで帝国に帰順する人々が現に存在する以上、きっと連合の統治下であっても完璧な理想郷は成し得なかったのだろう。
結婚披露宴と新婚旅行を経て迎える四月。いよいよ宇宙連合軍少尉としての生活が始まる。遥か連合主星にいる義姉エリシエラシス中将直属の部下として、M八七太陽系第三惑星……僕の生まれ育った地球を侵略の手から守る迎撃艦隊βに、初の男性クルーとして乗り組むのだ。
その艦隊を指揮するのは僕の妻となった女性、セフィアリシス・メルテリアラウス・コムスククレス・マハリマ・ラ・ナガト准将。只今双子の赤ちゃんを大絶賛妊娠中で、出産予定は六月中旬。
そんなわけで(どんなわけだ)、僕こと長戸零士、連合名レイジ・メルテリアラウス・ミカサ・ナガトの新生活がいよいよ始まってしまうのだった。
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