アパートにGが出まくるので簡易裁判する件

ぐらこ

第1話 はじめて簡易裁判を申請できた

このエッセイは、個人がはじめて簡易裁判を起こす話です。


 *


わたしは今までの人生でいくつか悔しい思いをしたことがある。

上司や同僚にいじめられたとか

不当な扱いを受けたとか

仕事関係のこともあったし

ネットでの中傷や、媒体でのトラブルや

噂などによる悪口のばら撒きなど

何日、何週間、何カ月と、心に傷が残って痛いことがあった。


幾つかは年月が経って忘れることができた。

幾つかは今でも心に残っている。

それにしても、今は思い返すことも少ない。


 *


特に10年単位で心に傷が残ってしまったのは失恋だった。

二股だったのか、三股だったのか私は分からなかったが、

付き合い始めた男性にポイと捨てられたとき、

自分では処理しきれない感情が湧き続けて、

泣いて、怒って、それが何年も続いて鬱状態に陥った。


 *


その間、どうにかその男性を訴えられないかと考えたこともあった。

日本は自由恋愛

(憲法第13条では「公共の福祉に反しないかぎり、

国民は個人の自由と幸福を追求する権利をもつ」)のため、

いくら不誠実であったとしても

それは実行できなかった。


 *


アメリカは訴訟大国と言われていて、

日本では意識しないことでも裁判が行われる。

ジュースを飲んで太ったとか、

たばこを吸って癌になったとか。

自分が健康に気を付けなかったことを棚に上げて、

企業からお金を取ろうとはなにごとか、

と、わたしは思ってしまう。


日本の公害問題を学校で学ぶので

「個人では回避できない被害は裁判で訴える」

そうマインドセットされているからだ。


「個人では回避できない」を取って

「被害は裁判で訴える」というマインドならば

裁判が権利というマインドセットならば

当然、ジュースやたばこも裁判対象となるのだろう。


 *


ただし、裁判は無料ではない。

特に弁護士費用は高額だ。


 *


以前、上司とのトラブルや、過労による退職について

弁護士事務所を訪ねたことがある。

市民相談は無料でできるが、

個人弁護士事務所は60分で1万円だった。


市長経験のある弁護士さんの個人事務所を訪ねた。

職場で起きたことや

傷ついて退職になったことなどを話したが、

弁護士に「訴えたとしても負ける可能性が高い」と言われた。

1万円払って諦めるしかないことを知った。


その経験から負ける裁判はできない。

裁判にはお金が掛かるという2点を学んだ。


 *


それから時が流れて十数年が経って2019年のこと

わたしはネット上でトラブルに見舞われた。


詳細は伏せるが

わたしが企画したWeb評論の連載を

圧力で取り止めさせた人がいた。


それ自体は傷ついたり

泣いたり、怒ったりといった感情はなかったのだが、

圧力の手の回し方がとても汚く、

わたしの周りの人たちに迷惑が掛かる手法だった。


組織や権力の存在に嫌気がさして

わたしは文筆をやめることにした。


 *


このときも、わたしは相手を訴えられないものかと考えた。

でも、なにを訴えればいいのかイメージできなかった。

パワハラと違って「慰謝料」でもないだろう。

たしかにその事件をきっかけに文筆をやめたが、

辞めさせられたわけではないし

鬱を発症したわけでもない。

相手が圧力をかけたのはわたし自身にであって、

それによって損害が出たわけではない。


ことの企画について

誰かについて批判や批評がWeb媒体に掲載されたとしよう。

たとえその議論が正論だったとしても

相手側が誹謗中傷だと訴えてきたとすれば

こちらが被告になる可能性もある。


被害を受けているのに反訴される。

そうしたことが裁判の世界では普通にある。


また、その当事者同士のやり取りの過程で

ある執筆者に慰謝料請求が発生した。


その人曰く、その対応だけで弁護士相談に際し

給与3カ月分掛かったとのことだった。※その時点で


わたしだったら破産だ。

無理だと怯んでしまった。


結果、この件は保留になっている。

時効まではまだあり、当時のメールもすべて保存されている。

このままではいけないと思う自分と

危ういことには手をつけてはいけないと思う自分がいる。


 *


2024年2月。

わたしは自宅からほど近いアパートを仕事場として借りた。

残念ながらそこはGがたくさん出て、

管理会社に連絡しても、たいした対応をしてもらえなかった。

おそろしくて、なにげない物音に何度も叫び声をあげた。

自分でできる限りの対策をしたがその現象は収まらなかった。


 *


電子式の薬品に24時間電源を入れていた。

1週間おきにバルサンを焚いた。

バルサンを焚いて翌日に部屋を確認。

部屋のあちこちに落ちている害虫の死骸に掃除機をかけた。

状況は都度不動産屋にメールで報告。


害虫の死骸のサイズが大きい場合、

目視もできず、処理できないまま泣いた。

保健所の相談員さんに話をしたところ、

捨ててあげるよと、自宅まで来てもらったこともあった。


結果、3カ月の間1日も寝泊りすることはできなかった。

料理もできなかった。


 *


5月、その物件を引き払った。

それまでに掛かった費用と恐怖による慰謝料を請求するべく

誰かに相談したかった。


今までのパワハラや事件のときの経験もあるので

難しいだろうとは思ったが、まずは調べてみたい。


ネットで検索したところ「内容証明」を出すことで

相手側が譲歩して支払いに応じる可能性もあると書いてあった。


そのため、G退治のときにも業者を調べるのに使った

「ミツモア」というサイトで「内容証明書」で検索し

行政書士にアポイントを取った。


行政書士は「訴えたとしても負ける可能性が高い」案件だと言った。

わたしもやはりそうかとは思ったが

今回は引き下がりたくなかった。


今までは人が対象だったが

今回は物件だ。

計測することがむずかしいわたしの気持ちではなく、

実際の被害が明確にある。


 *


そして、行政書士に内容証明書の作成を依頼したのだが、

最終的にその行政書士とは契約に至らず、

自分で内容証明書を作成することになった。


 *


つづく


 *


次回:内容証明書で40万円を不動産会社と家主に請求した


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