プロローグ2 都を発つ

 軍基地を中心に、放射状に広がる都でのこと。

 一年が経過したある冬の日、外は曇天で、小雨が絶え間なく降り注ぐ。

 都の温度計はマイナス二度を示す。

 軍本部の末端、基地と街の境界線に、『駆除班』の鉄看板と倉庫のような詰所が建っている。

 赤ずきんは手狭な隊長室を控えめにノックし、ライアン大佐のもとを訪れた――。




「――喋った?」


 赤ずきんの報告を聞いて、ライアン大佐は静かに驚くと、顎をさする。


「はい」

「彼は、今どこに……他に誰が知っている?」

「部屋にいます。今知っているのは私とワイアットさんだけですが、時間の問題だと思います」

「つまり?」

「なんといいますか、あの子は無邪気で無警戒で、とにかく人懐っこい。誰彼構わず話しかけるので、駆除班のみなさんにもいずれは……」

「駆除班だけなら大したことはないが、本部や調査隊に知られるのは、非常に面倒だな」

「ライアンさん……寒さが落ち着いたら、あの子と都を発ちます」


 突然の提案に、ライアンは首を横に振る。


「何を言ってる、ここにいた方が安全だ」

「いえ、私の我儘です」

「君の?」

「はい。自分を保つ方法が、これしかなくて……私は、狡い人間なんですよ」

「赤ずきん、誰しもそういう一面はある。思い詰めてるなら、みんなで一緒に解決していけばいい。君は既に駆除班の一員なんだ」

「ありがとうございます。ですがもう、決めたことですから。あと少しの間だけお世話になります」


 決意は固く、一歩も引かない赤ずきんに、ライアンは寂しく頷いた――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る