プロローグ2 都を発つ

 1年が経過したとある冬の日、外は曇りで小雨が執拗にやってくる。

 都の温度計はマイナス2℃を示す。


「喋った?」


 都の軍拠点、司令室。

 赤ずきんの報告にほんの少しだけ、ライアンは驚いた。

 オールバックの暗い茶髪の軍人。


「はい」

「どこにいるんだ、他に誰が知ってる?」

「部屋にいます。知っているのは私と、ワイアットさんだけです、でも時間の問題ですかね」

「つまり」

「無邪気というか、無警戒で人懐っこい子ですから、誰彼構わず話しかけると思います」

「俺達程度の小さな班なら、大したことはないが……本部や調査隊に知られるのは、厄介か」

「あの、ライアンさん、寒さが落ち着いたら都を発ちます」


 静かに立ち上がった。


「何を言ってる、ここにいた方が安全だ」

「いえ、私の、我儘です」

「君の?」

「はい。自分を保つ方法が、これしかなくて……私は、狡い人間なんですよ」

「赤ずきん、誰しもそういう一面はある。思い詰めてるなら、一緒に解決していけばいい」

「ありがとうございます。ですがもう、決めたことですから。あと少しの間だけお世話になります」


 決意は固く、一歩も引かない赤ずきんに、ライアンは寂しく頷いた――。

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