第8話 護衛艦隊の方針
光太郎から話を聞き、雪は動揺をし、剛士は目を瞑って何も言うことなく、思考を巡らせた。
「そちらの話も聞かせてもらってもいいですか?我々としても情報は少しでも欲しいので…」
「分かりました。我々の艦隊が、この世界に辿り着いた経緯をお話しします」
光太郎に頼まれ、剛士は自分達の世界のことと、この世界に辿り着いた経緯を話した。
その話を聞き、光太郎と大和の乗組員は耳を疑った。
「……信じがたいな、あの大日本帝國が、欧米列強国に負けるとは…」
第二次世界大戦を経験していない彼らにとって、史実と同じ歴史を歩んだ剛士の話は、信じられなかった。
だが、
「信じるしかあるまいか…我々の世界と、この世界に違いがあるように、様々な世界が存在するのだろう…」
今居る世界が異世界のため、光太郎は他にも数多の世界があると思い、剛士達の話を信じることにした。
「それで、つばきの者達はこれからどうするつもりで?我々は現在、帰還方法を探りつつ、この島に拠点を建設しています。そちらがよいというのならば、同じ日本人として受け入れは可能ですが、どういたしましょう?」
光太郎は日丸島は受け入れることが出来ていると、剛士に進言した。
「…少しばかり時間が欲しい、他の艦の艦長達としっかり話したいのでな」
「分かりました。では我々は大和に戻って、全乗組員にそのことを伝えてきます」
剛士の意思を確認した光太郎は、乗組員と共に大和に戻るため、なとりの乗組員に甲板まで案内してもらい、短艇にてなとりを後にした。
そして光太郎がなとりを後にしてから少しして、なとりは入り江から出るために動き出した。
「海上自衛隊の者達は、これからどうするのでしょうか?」
短艇で大和に向かう中、乗組員の一人がそう呟く。
「さあな、ただ…世界が違うとはいえ、同じ日本人だ。分かり合うことができると私は信じてる」
乗組員の呟きに、光太郎はなとりを見つめながら、協力し合うができると信じていた。
〇
あかぎの会議室にて、第九護衛艦隊に所属している艦艇の艦長達が集まって居た。
「以上が、戦艦大和の山本艦長から聞いた話だ」
剛士は、光太郎から聞いた事をありのまま話した。
それを聞きいたなとり以外の艦長全員が動揺する。
無理もない。自分達が漫画やアニメのように異世界転移し、更に帰還方法は不明だと聞かされたのだ。動揺しない方がおかしいだろう。
「私としては、大和並びに武蔵の乗組員と協力するべきと考えているのだが…皆の意見が聞きたい…」
動揺している艦長達に、剛士は意見を求めた。
「大日本帝国、私としては少々不安があります…」
「私もです」
「私も…」
黒色の長髪の女性こと、らいげい艦長
大日本帝国だけが完全に悪いという教育を受けて来た彼女達にとって、帝国軍人というだけで少し心配になるのは仕方ないと言えるだろう。
会議室に淀んだ空気が流れる中、春菜が口を開いた。
「……本国と連絡が取れない以上、彼らと協力するしかないでしょう…異世界とはいえ元は同じ日本人です。協力関係を築くことは可能なはずです。それに、もし私達が知っている大日本帝国ならば、敵か味方か分からない我々に、艦長自ら話し合いに赴く真似なんてしなと思います」
「そうですね…」
「確かに、同じ日本人ですし、向こうも協力し合うのを望んでいるようならば、それに答えるのがいいでしょう」
春菜の言葉は他艦の艦長を動かすのに十分であり、艦長達は首を縦に振り始める。
「決まりだな。第九護衛艦隊「つばき」は、戦艦大和と戦艦武蔵の乗組員に協力を要請する。この未知の世界を彼らと共に乗り越えよう!」
「「「「はっ!!!!」」」」
全員が首を縦に振ったのを確認した剛士は、大和と武蔵の乗組員に協力を要請するのを決定した。
そして翌朝、第九護衛艦隊「つばき」は大和と武蔵に協力を要請し、光太郎達はその要請を受け取り、第九護衛艦隊全艦を、近くにある島の入り江に止めるよう誘導した。
つばきの者達が合流したことにより、日丸島の人口は、男性約6400名、女性約2000名の計約8400名となった。
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