第7話 日本海軍と海自の邂逅
光太郎達が異世界に来てから一週間ほど経過しており、日丸島には着々と拠点や見張り台などが建てられている。
そんな中、大和の会議室にて、光太郎、信介、眞、光成の四名が、机に日丸島と周囲島々の地図を広げていた。
「現在、周辺で確認されている資源は、日丸島の食糧、北西の鉄鉱床、西のボーキサイト、そして南東の油田です」
光太郎は地図の島に、その島にある資源を書いていく。
「まさか鉄鉱床にボーキサイト、更に油田までがあるとは…」
鉄鉱床、ボーキサイト、油田があるという、日丸島を囲う島々の環境に、眞は髭を触りながら喜ぶ。
「鉄鉱脈があれば、拠点を強化することが出来ますし、大和と武蔵の燃料は大丈夫ですが、短艇や哨戒機の燃料は減っているため、油田は有難いです。南の方に煙が見えましたので、そこから硫黄を持ってくれば、砲弾の生産も可能かと…」
信介も信介で、鉄鉱脈と油田の存在に喜ぶ。
「そこで、日丸島並びに周囲の島々の拠点化の計画を立案致しました。まず、日丸島は港建設と食糧生産の施設建設を優先的に進めます。それと同時に、北西島の鉄鉱脈発掘施設の建設、南東島の油田の回収施設の建設も少しずつ進めていく予定ですが、技術が無いため建築は数年かかるものだと思ってください…」
光太郎は、自身が立案した日丸島の島々の開発計画を三人に説明する。
「やはり、問題は技術か…」
「はい。作業班がある程度の技術や知識を持っていますが、それでも遅れは出てしまいます」
光成の呟きに、光太郎はそれに付け足すように、技術のなさについて説明する。
「どう解決するものか…」
四人がそれぞれ、技術の無さをどう打開するか、考え始めたその時、
「失礼します!突如巨大船が出現しました!」
「何!?」
乗組員の1人が会議室に入ってきては、巨大船がいきなり出現したと報告してきた。
「それと同時に、所属不明の四隻の船も電探で捉えました」
五隻の所属不明の船をレーダーで捉えたと聞き、光太郎達に緊張が走る。
「各員持ち場につけ!日丸島の作業員はそれぞれ身を隠すように伝えよ!」
「はっ!」
報告に来た乗組員に、光太郎はもしもの時に備え、戦闘配備を命令した。命令を受け、乗組員は他の者達にそのことを伝えるべく、会議室から退出して行った。
「第一艦橋に向かうか…」
「「「はっ!!」」」
光成は乗組員が出ていった後、光太郎達と共に第一艦橋へと上がった。
○
「状況は!?」
第一艦橋に上がった光太郎は、乗組員達に状況を尋ねた。
「現在、所属不明艦は日丸島沖合にて停泊中です。先程、哨戒機らしき物が来ましたが、いきなり攻撃するのは悪手だと考え、手は出してません…」
「そうか、正しい判断だ」
光太郎に変わり、指揮をとっていた副艦長
「…っ!停泊中の所属不明艦隊の一隻が動き出しました!」
レーダーが一隻の船が動き出した所を捉え、そのことが艦橋に入る。
「…各員第一種戦闘配置のまま待機!こちらから合図があるまで攻撃はするな!鳴門艦長、武蔵にもそう伝えてくれ」
「ああ!」
大和と武蔵は、第一種戦闘配置でこちらに向かってくる所属不明艦に備えた。
「所属不明艦、入り江に入ってきます!」
入り江に入ってきた所属不明艦、なとりは発光信号にて、大和と武蔵に連絡を取ろうと試みる。
「所属不明艦、モールス信号を発光!…我々に敵意なし、大和と武蔵に会合を求むとの事です」
「ひらがな…」
なとりはモールス信号にて、大和と武蔵に敵意がないことを伝えた。
一方、光太郎はなとりに書かれてある文字が、平仮名だと気づいた。
「竹田海軍大将、私が行ってきます。私の推測が正しければ、恐らくあの所属不明艦は、大日本帝國と関係があるかもしれません」
「うむ、だが気をつけてくれ」
「はっ!」
光太郎が会合に赴くことを光成は認め、光太郎は数人の乗組員達と共に、短艇で「なとり」へと向かった。
○
「日本人だな……」
短艇がなとりに近づくに連れ、光太郎は艦首付近に居る男が、日本人だということに気づく。
そして短艇は、なとりに横付けされるように止まった。
「どうも、私は日本国海上自衛隊第九護衛艦隊「つばき」の艦隊司令官、松本剛士と申します!」
「大日本帝國海軍第四聯合艦隊旗艦、戦艦大和の艦長、山本光太郎だ」
顔を見合わせた二人の軍人は、互いに敬礼しつつ挨拶を済ませる。
それと同時に、互いに疑問を抱く。
(日本国?大日本帝國ではないのか?それに、海上自衛隊とはなんだ…?)
(第四聯合艦隊の旗艦…?大和は確か、第二聯合艦隊の旗艦だったはずだが…?)
海上自衛隊という聞いた事もない単語に光太郎はより一層警戒心を高め、一方の剛士は大和が第二聯合艦隊ではないことに疑問を抱く。
「では、どうぞお上がりください」
「失礼する」
剛士は光太郎達を短艇からなとりに移動させ、そのまま艦内へと案内した。
「女性が多いな」
艦内移動していた光太郎は、すり違う乗組員が女性しか居なかったため、そのように口に出した。
「ええ…つばきは、女性のみで作られた護衛艦隊なんですよ。男は私一人です」
「ほう…」
あの艦隊の乗組員全員が女性と聞き、光太郎は少し興味を持つ。
光太郎世界の大日本帝國では、実力至上主義により、実力がある女性海兵が増えては居るものの、それでも少数だ。そのため、艦隊全員が女性と聞きいて興味を持ったのだ。
そして剛士は、光太郎達を艦長室まで案内した。
「どうも、私はこの護衛艦「なとり」の艦長を務めている
「大日本帝國海軍第四聯合艦隊旗艦、戦艦大和艦長の山本光太郎だ」
艦長室に居たなとりの艦長、雪と光太郎は互いに敬礼して自己紹介を済ませる。
「どうぞ、おかけください」
「失礼します」
剛士に勧められ、光太郎はソファーに座り、連れてきた乗組員達はその後ろに立ち並んだ。
一方剛士と雪は、光太郎と向き合うように、反対側のソファーに座った。
「それでは本題に入りましょう…現在つばきに所属している艦隊は、このなとりを除き、この島の沖合に停泊中です…我々としては現在位置などを知りたいのですが……」
「……」
剛士からの申し出に、光太郎は少し考えた後口を開く。
「分かりました。我々が知っていること全てをお話します」
情報を共有しても良いと思い、光太郎は自分たちがこの島に流れ着いた経緯と、ここが別の世界ということを二人に話すことにした。
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