第13話

堪え切れずこぼれ落ちてしまったというような愁くんの笑い声。



「ど…した、の?」



私は何か変なことを言ってしまった…?



不安になり顔を覗こうとしたら、ベッドが激しく音を立て始めた。それと共に視界が揺れる。



「んっ!?ひうっ…あっ、あぁ…!」



さっきまで緩やかな律動を繰り返していたのに、私を強く抱き込んだ愁くんの動きは激しさを増していく。そして執拗に胸元にある痣を舐め上げた。



「あ、もぅ…ダメッ…!」


「ククッ。いくぞ、小春」



その低い声を合図に頭が真っ白になった。私の中にいる愁くんも何度も波打ち、汗ばんだお互いの肌がシットリ張り付く。



「安心しろよ」



胸元から顔を上げた愁くんの手が額で濡れる私の前髪を搔きあげ、優しくキスを落とした。



「俺が小春を嫌いになることはない」


「ほ、ほんと?…絶対?」


「あぁ」



笑顔で頷く愁くんにギュッと抱きつく。



愁くんはいつだって優しい。こんなひとりでは何もできない私には勿体無いくらい素敵な人。



友達もいない、親しい知人もいない、両親にだって数年に一度しか会えない。そんな孤独な私を孤独にさせないのは愁くんだけ。



私の大好きな人。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る