第8話
「盗聴なんていい趣味してるわね。小春ちゃんに逃げられても知らないわよ」
投げ返されるネックレスは弧を描き落下していく。
キャッチされることなく床に落ちた盗聴器を、ダイヤごと踏み潰す。思いのほか簡単に粉々になったそれを見て笑いが溢れる。
小春が俺から逃げる?
笑わせんなよ。
「小春は俺がいないと生きていけない」
小春の中で俺は絶対で唯一頼れる存在。時間をかけて着実に積み上げてきた信頼と服従は、無意識のうちに小春に刷り込まれている。
どんなに理不尽なことだって俺が肯定すれば小春は納得して従う。自分の親よりも俺の言葉に左右される。
「1年間の仕事体験は最後の仕上げだよ」
「は?」
「自分の無力さを知り、俺と居ない不安感を煽るには丁度いいだろ?」
約束を破ったのは想定外だが、元々1年も待つつもりはなかったから別にどうでもいい。
「相変わらず狂ってるわね」
「今さらだな」
「祐介さんには何もしないでよ」
「…次はない」
本当だったら小春と口をきいたこいつの旦那を手にかけてやりたいが、一応恩があるから今回だけは見逃してやる。
それに今はそんなことをしてる暇はない。
この腕に眠る愛おしい存在を永遠に縛りつけることが最優先なのだから。
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