第26話

チリンと響く音が聞こえ、私は顔を上げた。




「綾ちゃん」



目を細め笑顔で近づいてくるのは制服姿の優くん。




「座ってもいい?」


「うん、」



首を傾げ聞いてくるから、昨日は勝手に座ってたのにと思いながら頷いた。



「今日お友達は…」


「いないよ。ちょっと忙しいみたいで」


「そうですか…」



そうだよね。高校生だと部活やバイトをしててもおかしくないもんね。



ひとり納得していると、優くんがクスクスと笑い出す。



「俺、年下だよ。たまに出る敬語やめてよ。仲良くなりたいって言ったじゃん」


「あ、う、うん…!気をつけるね」




「ご注文は」



唐突に聞こえた奥山さんの声にビクッと反応すれば、またクスクスと笑われた。



「じゃあブラックをお願いします、奥山”さん”」


「……かしこまりました」



注文を受けた奥山さんは少し眉を顰めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る