日常と必然

1

第1話

「お疲れ様です」



17時、定時に上がることができた私は足早にバスへ飛び乗った。



今日は何を飲もうかな?

季節限定のケーキを食べてみようかな?


頭の中はそれでいっぱいだ。






「いらっしゃいませ」




赤煉瓦が色鮮やかなレトロな建物の扉を開くとチリンと音が鳴り、落ち着いた雰囲気の声に迎えられる。




お気に入りの、一番奥の観葉植物で隠れた席へ腰を下ろしメニューに目を向けると、夏限定のレモンソースのかかったチーズケーキが目に入り顔が綻ぶ。




机の上に置いてあった小さなベルを鳴らせば、この店のオーナーである奥山さんが笑顔で注文を受けてくれる。




「仕事お疲れ様、綾ちゃん。今日は何にするの?」




私の父と同い年である奥山さんは若々しくダンディな人で、この隠れ家のようなLampというカフェを一人で営んでいる。




このカフェを見つけて、初めて入ったのが半年前。



店内の穏やかな雰囲気と、美味しいケーキやドリンクの虜になってから、少しでも時間があればこうして訪れている。

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