短歌連作「私と君、ぼくとご主人」 お題【猫】

・こんにちは、今日からずっと、よろしくね。首を傾げてクリっとした目


・「降ろしてよ」棚の上から鳴いている。降りれないのに、なんで乗るかな


・「ほら見てよ! 今日は大きなバッタさん」なんでわざわざ、持ってくるかな


・ご主人の、撫でてくれる手おっきくて、温かくって、なんかウトウト


・あ、おはよう。起こしてくれてありがとね。なんか最近、重くなったね


・欠伸して、背伸びしてから歩き出し、膝上ひざうえ陣取り丸まったきみ


・膝の上、ちょっと重くて温かい。いっぱい食べて元気な証


・丸まって、喉をゴロゴロ鳴らしてる。なんかウトウトASMR


・浴槽に浸かる私を、見てる君。心配しないで、溺れてないから


・ねえ聞いて。今日もいっぱい叱られた。頬を擦り寄せ小刻みに鳴く


・騙したな! ドライブだって言ったじゃない! お注射された。もう馬鹿しらない


・拗ねてるな。あれからずっと、シャーと鳴く。最終手段のおやつを出すか


・ご主人に、もう知らないと言ったけど、それを出されちゃ話は変わる


・ここに来て、あれから何年経ったっけ。大っきくなった。ぼくも主人も


・「ご飯だよ」呼べばいつもは来るのにな。どうしたのかな? ねえ、どうしたの?


・なんでだろ。からだが全然うごかない。あれ、ご主人だ。なぜ泣いてるの?


・たすけてよ。神様お願い、たすけてよ。この子は大事な、家族なんです


・目を開く。精一杯のかすれ声。また目を閉じる。時計は止まる


・ありがとう。今までずっと、ありがとう。大好きだったよ。だからおやすみ


・埋まるかな、心にぽっかり開いた穴。ずっと見ててね、天国の君


・もう秋か、あれから何年経ったっけ。君はあっちで元気にしてる?


・藪の中、助けを求める声がする。首を傾げてクリっとした目

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