1杯のコーヒー

月白 蓮

第1話 1杯のコーヒー

 壁にぶち当たっている。


 夢を実現しようとキラキラとした思いと一緒に、新しいスタートを切ったはずなのに、現実はそう甘くはないのか、思うようにいかずにモヤモヤする日々。


 一大決心をしてはじめた事も思い通りにいかずに、もう一層の事スッパリとやめてしまおうか、なんてことも頭によぎる。


「大丈夫、きっと成功する」と、はじめた頃は根拠のない自信があったはずなのに、今はどこに行ってしまったのか…


 そんな考えを振り払って自分の心をリセットする。


 最近見つけたお気に入りの喫茶店に行き、1杯のコーヒーを注文する。


 店内の照明は少し薄暗く、モヤモヤと晴れない気持ちを抱えている自分をそっと包み込んでくれているような、そんな静けさはお気に入りのひとつである。


 窓際の席に腰かけて外を行きかう人達を眺めながら、1杯のコーヒーをゆっくりと飲む。


 皆楽しそうに見えても、それぞれに悩みを抱えているのだろうか……


 そんな事を考えながら、折れそうになった自分の心をこのお気に入りの場所で癒し、気持ちをリセットする。


 1杯のコーヒーをゆっくりと時間をかけて味わう。


 モヤモヤとした心が穏やかになったころ、気持ちを新たに店を後にする。


「よし!」


 そう小さく声に出して自分に少しだけ気合を入れる。


 きっとまた近いうちに、自分を慰めにこの喫茶店に来てしまうだろう。


 その時はコーヒーとケーキのひとつでも注文してみよう。


 次来る時は、ケーキを味わうだけの心の余裕があることを願いながら、自分を甘やかし、落ち着ける場所があることに感謝し店を後にした。

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