アオハルリセットボーイは今日も君の好意を忘れる

はくすい

第1話 最高の日


いきなりだが俺、白石しらいし とおるには好きな人がいる。


隠さずに言うと同じクラスの女の子 水瀬みなせ 琴音ことねの事だ。


きちんと手入れの行き届いているダークブラウンなその髪は清楚な印象を与え、明るすぎないナチュラルな茶色の瞳は親しみやすさを感じさせる。

周りの視線を意識しながらも時折見せる優しさを含んだ微笑みや課題に取り組む際の真剣な眼差しが印象的な彼女は常に落ち着いていて内向的な優しい性格の持ち主で、その内向的な性格をまんま表しているかのような至高(貧乳)の胸を持っているそんな彼女に俺は女々しくも恋をしているのだ。


俺が彼女を好きになったきっかけはその容姿からである。


失礼を承知で言うが学年一の美少女と評される程の圧倒的な美貌は無い。しかしある程度整っている水瀬さんの容姿は一目見た瞬間から某野球選手の如く俺のストライクゾーンをばっちりと射抜き、それからずっと注目の人物となったわけだ。


しかしこれだけではそこそこの面食いだと思われるかもしれないが、もちろんそんな理由だけでない。

同じクラスという特権を活かして普段の水瀬さんの柔和で優しさの溢れる性格に触れることでどんどんと惚れていったということは語弊の無いように伝えておこう。


ただ、学校が始まってからここ2〜3ヶ月俺が水瀬さんのことを一方的に知っていくという状況にあり、本当に情けない話になるがInstagramでアカウントを交換したくらいしか進展がなかったわけであった…



が本日そんな進展のない日々に終止符を打たれることとなる。




☆☆




それは6限目の授業終わり、放課後に差し掛かった時のことだ。


俺はせっせと教科書を鞄に詰め込み、下駄箱へ向かおうと教室を出るために立ち上がろうとしたところとある人物に声をかけられる。


「じゃーな白石!また来週な!」


そうやって俺に別れの挨拶をしてきたのは親友である美涼みすず 湊和そわだ。湊和とは一年生の時に同じクラスで仲良くなった人物で、高校生活になかなか慣れずクラスに馴染めないでいたの俺に話しかけてくれて、クラスメートと仲良くなれるよう取り計らってくれた良い奴だ。

しかも笑顔輝く爽やかイケメン、さらに運動神経抜群というオーバースペック人間。

俺にもその欠片くらいスペックを分けて欲しかったものだ。


一応補足しておくが1年の時だけだからな?馴染めなかったのは。

ちゃんとクラスのみんなから「今日俺放課後忙しいんだわ!」「私今日放課後予定あるの!」と日直の仕事を頼まれるくらいには良好な人間関係を作れているのだからな!


…さて親友の紹介も終わったところだし、そろそろ別れの挨拶を返すとしようか。


「おぅー、またなー」


俺からの返事を確認した湊和は手をヒラヒラと振り所属しているサッカー部へと向かって行った。


さて、俺も帰るか。


透は席を立ち、帰る前に琴音の姿を一目見ておこうとちらりと彼女の席へと目を向ける。

しかし目線の先にはぽつんと椅子と机が寂しく佇んでいるだけであり、彼女の姿を捉えることは出来なかった。


今週最後の幸せを取り逃し、少し落ち込んだ気分になった透はようやく教室を出て本来の目的である下駄箱へと歩き出す。


はぁ、今日も疲れたな…。

なんで出席番号と日付が同じなだけでどの先生も俺の事を名指ししてくるんだよ。

挙手制でいいだろ、わざわざ1人に被害を出そうとせずさやる気のあるやつを当てればいいだろ…

しかも一日の終わりに水瀬さんも見ることが出来なかったし。

最悪の日だったな…。


などと愚痴を零しながら階段を下り、下駄箱が見えてくる位置に到着するとそこで誰かを待っているかのように佇んでいる女子生徒を確認した。


…前言撤回、やっぱり今日はいい1日かもしれない。


この状況において透の手のひらをひっくり返せるきっかけとなるような人物と言えば一人しかいない。


そう、なんとそこには水瀬 琴音がいたのだ。


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