夢の世界 AI

かじ(Kazi)

第1話 私は誰?

 時々、自分の性別が分からなくなる時がある。私は男性なのかそれとも女性なのか。別にXジェンダーとかそういう話をしたいのではないし、そういうふうに自分の事を考えている訳ではない。しかし、ちょっと今、調べて少し興味をもったので物語の本筋(ほんすじ)といきなりずれるけど、簡単にまとめてみようと思う。

 Xジェンダーには、中性、両性、不定性、無性の4つのタイプがあるらしい。たまに男性なのに女性の格好をしている人とかを見かける事があるが、そういう人はどれに当てはまるのだろうか。もちろん人によるのだろうが無性以外のどれにでもあたりはまりそうだ。


 話がいきなり脱線し過ぎたので話を戻す。私の名前は川原 知人(かわはら かずひと)。哲学者(てつがくしゃ)だ。哲学の研究をしている。大学の教授もしており哲学の授業を分かりやすく学生に教えようと日々、努力している。しかし、その努力は全く報(むく)われそうにない。


 一般の人によくきかれる事がある。「哲学者はいつも何を考えているのですか?」

 この質問に答えるのは、いつも非常に困る。専門的な哲学の研究内容を話せば良いのだろうか。しかし、フランスの思想家アンリ・ベルクソンの「純粋持続」とか

ハイデッガーの「存在と時間」の中に書かれた事などを話したところで、全く理解されず、それどころか全く興味がない話をされてかなり迷惑そうな顔をされる。「そっちが質問してきたから答えてたのに・・」と、いつも声には出さず、心の中で思っている。そういう経験を何度かした事で最近は、「今日の晩御飯(ばんごはん)はカレーにしようか、スーパーでお寿司でも買ってきて食べようかなと考えています。」と答えても、「そんな事をききたい訳(わけ)じゃないんだよなあ・・」みたいな事を思ってそうな顔をされるのだった。結局、どんな答え方をしても相手の反応は同じじゃないかと思い始めた。

 

 今日は、大学で学生相手に一般教養の授業で哲学の授業がある。今日は初回の授業である。今日の授業の内容は「哲学とは何か?」にした。私は導入の部分で少しでも一般の学生に興味を持ってもらえるように、こりずに「哲学者は何をいつも考えていると思いますか?」「晩御飯なカレーにしようか・・・・などという事を考えています。普通の人と考えている事は変わらないですね。」と言ってみた。反応はまあまあ良かった。良かったという程(ほど)でもなかったかもしれないけど、そこまで反応は悪くないように感じた。そして、授業を進めていった訳だが、本格的に「哲学とは何か?」みたいな話をし始めた途端に学生達の目は死んだ魚のような目になった。10分もしないうちにスマホを見始めたり、居眠(いねむ)りしたり、友達と小さな声でしゃべり始める学生さえ出てきた。私の教え方はそんなに、ひどいのだろうか。それとも哲学がつまらないのだろうか。分からない。90分の授業は教えている自分でさえ非常に長く感じた。ようやく授業が終わり周りを見ると、まともに最後まできいてくれた学生は、ほとんどいなさそうだった。私は、本当にがっかりしたが、最後に授業のアンケートをした。次回以降の授業する時の参考になると思ったからだ。アンケート用紙を配り、記入している姿をみると、みんな嫌々記入しているようにみえた。私は記入されていたアンケート用紙を回収した。アンケート用紙には「何も分らなかった。」とか「つまらない授業だった。」、「教ええるのが下手過ぎです。」、「唯一理解できたのは晩御飯の話だけでした。」というものばかりだった。私は本当に絶望的な気分になった。その日は早く帰り、全てを忘れようとして眠る事にしたのだった・・・。


 私は気が付くと、丘の上に立っていた。ここは、どこだろうか・・。記憶があいまいだ。下の方をみると綺麗な海が見えた。周りには白色のお洒落(しゃれ)な建物がたっていた。周りの景色は初めてみたような気はしない。デジャブ(既視感)(きしかん)だろうか。私はある事に気付いた。自分の髪が長いのだ。私は自分の姿を見たくなった。すると、鏡をみなくても私の目には自分の姿が映し出された。


「私は女性だ。」


 私はびっくりした。

 しかし、同時に何をそんなにびっくりしているのかと自分で思った。私は最初から女性だったではないか。名前は「鈴木 愛衣(すずき あい)」。工学部。航空宇宙工学科に通う学生である。


 (続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る