【朗報】未来から来た天才美少女錬金術師の協力で今日から俺は女を抱きまくる!……はずだった。

いぬがみとうま

第1話 天才錬金術師、現る

「もう一年だけ、絶対、今年は受かってみせるから!」


 田舎を離れ東京に来て二年目。都内の小さなアパートは仕送りとバイトでなんとか生活をできるだけの俺の城だ。

 

 床に穴を開けるが如く渾身の土下座で勝ち取った浪人生活二年目は、夏を迎えようとしていた。大丈夫だ。まだ半年あるからな。

 俺は今日も、出会系アプリに精を出している。


「あのさ、イサム君。予備校生は専門学校生って言わないのよ」

「なんでだ! 受験する人専門の学校だ。変わりはないだろ。差別するなよ」

「じゃ、最初から浪人生っていいなよ、中途半端に見栄張って」

「うるせー。ちょっとかわいいからって! 俺が一流大学に合格したら覚えてろよ」

「なによ、何を覚えてろって言うの?」

「一発オ✕コさせてもらうからな!」

「最っ低!」

 

 父さん、母さん、東京は差別にまみれた酷い街です。


「ったく、東京女はなんて汚い心を持っとるんじゃ。中身が腐っとるポンカンじゃ」


 今日も、右手が恋人か。今日の獲物は、せっかく可愛い女の子だったのにな。

 結局、ABCを飛ばして自慰か。

 俺はベッドに横たわり布団を枕に巻き、いつもより枕を高くして、ボクサーパンツを脱ぐ。


「ふぁんざー。ふぁんざー。かーわーいーいーおーんーなーを召喚! っと」


 スマホをタップした瞬間に部屋の電気が消え、股ぐらが紫色に光りだす。


「なっ! なんじゃ! 股間の辺りが光り出しよった!」

 

 たなびくカーテン、巻き上がるシーツ。

 次の瞬間――

 部屋の電気は点き、俺の股の間に正座する女の子が現れた。

 キョトンとする、その瞳は深い碧色で、ついつい瞬きも忘れて見入ってしまう。


「だ、誰です……か?」

「ど、どこですか?」


 暫く、呆気に取られている二人。

 女の子が視線を落とすと、そこには俺の日本刀がそそり勃っている。


「きゃぁぁぁ」


 俺は女の子が繰り出すコークスクリューパンチをチンに喰らい、悶絶し気絶した。


 目覚めると、カーテンの隙間から朝日が差し込でいる。

 随分、変な夢をみたな。たしか、股間のあたりが光りだして……

 そうそう、こんな感じの女の子が現れたんだよな。

 そんなこと、この二十一世紀にあり得るはずな……ん?


「あり得たぁぁ!」

 

 俺の股間で、キンタ枕をして眠るこの女の子は一体何者だ!

 パシッパシッと女の子頬を軽く叩いてみる。


「んん」

「お、起きたか。君は一体どこから」

「たしか、錬金してたら体が宙に浮いて……気づいたら目の前にキノコが……って」


「きゃぁぁぁ」


 再びチンを狙って繰り出すコークスクリューパンチをギリギリ躱す。


「とりあえず落ち着け。話を整理しよう。俺は、イサム。手塚イサム。君は?」

「カサンドラ・エモンディアス。錬金術師よ。皆からはキャシーって呼ばれてるわ」

「れ、錬金術師……。二つ名とかってあるの?」

「なにそれ? そんなのはないけど」

「俺は、アソコの硬さから『鋼の錬チン術師』と呼ばれているがな」

 

 キャシーは、わなわなと震え拳に力を込める。


「ちょ、まてまて、この場を和ませようとギャグをかましただけじゃないか」

「ところで、ここはどこ?」

「どこって、東京だけど」

「トウキョウ……まさか、ニッポンのトウキョウ?」

「ああ、日本だけど」

「なんと千年前に滅びたといういにしえの都に……転移できたのね!」

「滅びたってどういうことだ! 二〇二四年現在、滅びる様子はないけど」

「私の時代は西暦換算だと……三〇五〇年よ」

「な、なんだってー!」

「過去の文献で見たことがあるわ。それはMMRキバヤシたちの驚き方ね」


 キャシーことカサンドラ・エモンディアスの説明によると、二〇三〇年に世界は未曾有の危機により滅び、文明を失ったらしい。キャシーたち未来人は電気が失われた世界を新たな技術、新・錬金術師で新たな文明を築いた。

 電気の技術を復活させるために、過去への転移にを何度も試みるも成功しなかったが、なんと今回、キャシーが成功したのだという。


「へぇ、電気をねぇ。そうか、俺が自己発電していたからかもしれないな」

「んなわけあるかァ! アンタ錬金術をバカにしてるの!」

「まあ、理由はわかったよ。じゃぁ、電気のある未来のために頑張ってくれな」

「え? 麗しき乙女を追い出そうとしててない?」

「え? 俺は、専門学校へ行かないといけないから」

「これもなにかの縁よ。私をしばらくこの家においてもらうわ」

「なにかの縁ですは、俺が言うセリフだろ。断る!」


 「おねがいです」と俺の服にすがりつく錬金術師を自称する女の子。予備校に遅れそうで焦っていた僕は、「わかったわかった」と適当に返事をして家を飛び出した。


 予備校では授業を受けた帰りに講師に呼び止められる。

 

「手塚、明日の模試は大丈夫? 君、今回ダメなら結構ヤバいぞ」

「えへへ。なんとか徹夜で頑張ろうかと……」

「はぁ、そういうところがダメなんだよな。親御さんに連絡しておくよ」

「待ってください! 師匠! 親だけは、親だけは勘弁してください」

「誰が師匠だ! しょうがないだろう。君が真面目に勉強をする気がないなら」

「仕送りがストップされてしまう」

「仕送り……とにかくだ、次の模試の結果次第では親御さんに連絡するからな」

「ははぁ! ありがたき幸せ」


 まいったな。まだ時間あると思って余裕ぶっこいてたわ。もっと勉強していればよかったな。ついに俺の東京生活も終りを迎えるのか。


「おかえりなさい。イサムくん」

「貴様、なんでまだ俺の家にいるんだ?」

「なんでって、居住の許可をもらったし」

「いや、あれはお前が邪魔だったから適当にあしらっただけだよ。早く出てけって」

「ええ、そんな……」

「俺は、明日の模試の勉強をしなければ、東京から出ていかないと行けないんだ」

「勉強ですか……そうだ。わたしの錬金術でお手伝いしましょうか?」

「な、なに?」

「勉強なんて錬金術で脳の海馬を飛躍的に活性させる、ご飯『暗記米』で一発よ」

「キャシぃぃぃ。お前は、救世主様だ! 猫型ロボット様だ!」


 キャシーは炊飯器を魔法陣の中心に置き、両手を魔法陣に手を添える。

 すると、輝く光とともに炊けたお米のいい香りが部屋を包みこんだ。


「す、すごい……」

「できた! このお米を暗記したいページに塗りたぐってから食べてみて」


 僕は、しゃもじで米を取り、巻き物を作る寿司屋の大将のような手つきで参考書の公式が載っているページに塗りたくる。

 恐る恐る口にいれると脳に直接文字が書き込まれる衝撃と共に完璧に記憶できた。


「おお。すごいぞキャシー!」

「でも、この錬金術には、重大な欠点があるの……」

「(ごくりっ)……そ、その欠点とはなんだ。」


「お米のベチャベチャで本がダメになってしまうのよ」

「中途半端な副作用ぉぉぉ!」

 

 こうして、僕と錬金術師キャシーのドタバタな浪人生活が始まるのだった。



――――――――


面白かったら★★★いただけたら嬉しいです。

今日は3話分更新予定です。

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