桜木ジロウは魔法少女を辞めたい

ウメダトラマル

プロローグ

 二〇XX年。かつて漫画やアニメといったフィクションの世界だけの住人だった魔法少女という存在が、初めて現実世界に姿を現してから約半世紀、世代で言うなら丸々二回り分が経過した。


 魔法少女。

 今日もどこかで悪の怪人と戦いを繰り広げている彼女たちが、どこから来てどこへ行くのかは誰も知らない。魔法少女たちの正体は今なお謎に包まれていて、未だ明かされたことはない。

 いや、なかった。これまでは。



「実は俺、魔法少女なんだ」


 埼玉県の行政、商業、文化の集う街、サイタマシティ。その中心部よりやや北側に位置するサイタマセントラル高等学校。

 緊急時を除き、普段は生徒の立ち入りが禁止されているその屋上にて。


――実は俺、魔法少女なんだ。

 馬鹿みたいな格好の男子生徒の口から馬鹿みたいな台詞が出てきた。駿河ミヤコはそんなことを考えた。

 ちなみにそれを口にした桜木ジロウも似たようなことを考えていたが、それはミヤコの知るところではない。



 意味が分からない。分からなすぎて、この状況は何なのだろうとミヤコは考えた。何故こんな状況に陥ったのか。そもそもの発端はいつ、どのタイミングだったのかとも考えたりした。

「……どこで間違えたんだろう」

 思い当たるのはこの日の朝。点けっぱなしだった家のリビングのテレビ。

「天秤座のラッキースポットは『屋上』です! それでは今日も行ってらっしゃい!」

 玄関を出る直前に聞いた女子アナの声が、思えば全ての始まりだった。

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