第2話 出発準備

 守の命日の前後は、いつも不思議と三獣隊も死神機関も暇になる。導さんの操作があったと言ってもおかしくないタイミング。なんて毎年思う。

 煙管の煙を吐きながら廊下を歩いていると、紫音が長刀を片手に歩いてきた。片手を挙げると、向こうも挙げてくれた。

 そのままハイタッチをする。なんとなく今の俺らでハマってる挨拶の仕方だ。この前までは通りすがりにあやとりしてた気がする。今思うとよくやってたな。

「よっす、お疲れー」

「お疲れ〜。今日も忘れずに吸ってるようで安心したよ」

 守以外は俺が煙管を吸う本当の理由を知っている。守が来る前に吸い忘れをしなくなって、導さんも紫音も、俺自身も安心した。

「まあ、守がいるからな」

「じゃあもう大丈夫そうだね。そうだ、現世でいつもの買ってきてよ。そろそろ行くんでしょ?」

「オッケー、オッケー」

 紫音は満足そうに笑って仕事へ行った。あいつも俺も丸くなったものだ。

「いつものやつでいいかな。導さんには本を、伊万里さんにはハンドクリームでいっか。あとは──」

 買ってくるものを考えているだけで、あっという間に導さんの部屋に着いてしまった。煙管の火を携帯灰皿に落として消した。導さんは気にしないようだが、さすがに導さんの部屋で吸うのは気が引ける。

 軽くドアを叩いて合図してから入るが、また導さんは暗がりの中で読書をしていた。目が悪くなると言っているのに、またこの人は。

「また眼鏡の度がキツくなりますよ」

 明かりをつけてやっと俺に気づいたらしい。導さんは本から目を離して笑った。

「それより、守君は大丈夫そうですか?」

 あ、俺の心配を無視したな。

「まあいつもの通りですよ。自分の命日ってだけで色んなこと思い出すみたいです。暗い顔してたんで泣かせときました」

「匡らしいですね。守君のことは任せましたよ」

 仮死状態にした時からずっと言われてる気がする。とりあえず忘れないうちに薬をもらっておこう。

「導さん、薬をもらっときたいんですけど」

「そろそろ無くなる頃でしたね。現世に行くのですから多めにわたしておきましょうか」

 そう言って導さんはいつもの倍の量をくれた。けど正直、もう少しほしい。

 現世で何があるかわからない。顔に出ていたのか、導さんはため息とともに追加してくれた。

「何かあってからでは遅いですからね。匡の勘は当たりますし、念のためです」

「ありがとうございます」

 嫌な予感というのは少ししていたのかもしれない。

「気になることがあるなら、紫音もつけましょうか? 三獣隊がいなくても一日なら死神も大丈夫だと思いますし」

「べつに大丈夫ですよ。いってきます」

 ここで俺は頷くべきだった。

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