第41話 文字の読み方

「今日はもう戻れ。もしかしたらまた呼ぶかもしれんが」

「わかった」


 直接狙ったやつと恨みを持ってたやつはわかったが、どこかに誘い込もうとしていたやつがまだわかっていない。


「あ、その前に」


 聞かなくてはならない質問がある。受付の人の姿になったやつを。


「僕を狙ったのはあんたと恨みを持ってるやつだけ? 夜、外に呼び出したやつのことは知ってる?」

「誰のことだ」

「受付さんの姿になって夜呼び出したやつ。知ってるでしょ」

「いや、知らない」


 水晶が嘘発見の参考になる。問いかけ、水晶を見たが何も変わっていなかった。何故だ。


「違うだと? 共同犯だと思っていたが……」


 ギルドマスターも驚いている。じゃあ、あれはいったい誰だったんだ。


「あとはこちらで調べよう。また時間がかかるかもしれんが」

「わかった」


 とりあえず今日は受付に向かう。今の段階では何も出来ない。

 ギルドマスターの部屋を出て受付へ。ここはいつも通り賑わっている。


「大丈夫だった?」

「うん、平気」


 ユルリカが心配そうに見てくる。さっきのこともあってか、ユルリカは可哀想だな。


「今日は受付をしながら文字の読みを教えるわね」

「わかった」


 ついに文字を読めるようになるのか。これで依頼を受けられるようになる。そして、資料も読める。やっとこの世界の怪物についての知識が得られるな。


「今来ているのは、ファング・ジャックフロストの調査ね。なんの生物だと思う?」

「うーん、妖精?」

「正解」


 ペンの先についている羽で文字一つ一つを教えてくれてる。エフがℲと反対になり、aがЭとなっている。間違えてユーロと読みそうだな。

 ファング・ジャックフロスト。ファングは牙。牙をもった妖精ということになるのか。実際に見てみないとわからないが、名前からして狂暴そうだな。


「妖精を討伐?」

「ファング・ジャックフロストは普段は友好的なのだけど、何かがあって、今、森の中で大雪が発生しているの」

「そうなんだ」


 ファングはついていないが、ジャックフロストの名前は聞いたことがある。確かイングランドの民間伝承に出てくる寒さを具現化した妖精だったはず。冬が厳しくなればジャックフロストが悪さをしているとか。姿も定まっていない。雪だるまであったり、小人であったり。

 こちらの世界のジャックフロストがどんな感じなのかはわからないから、結果が来るのを待つしかない。


「いつかはあってみたいな」

「友好的ではあるけど、人の前に姿を現すのはまれみたいなの」

「そうなんだ」


 特に何かをするわけではないが、姿は気になる。依頼を受けた冒険者がいう姿と、私が実際に見た姿は違うのかもしれないからな。

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