第11話 不思議な感覚の食事

「もう少しだけ状況を詳しくお聞きしたいのですが、まずは食事をしてからにしますか?」


 微笑みながら私の方を見てくる受付の人。周りをちらりと見渡せば、円形の机を囲んでいる人たちもクスクスと笑いながら私を見ていた。


 遠くにある食事を提供する人まで見ている。それほど大きい音が鳴っていたのか。とんでもなく恥ずかしいな。


「そうします。食べ終わったらここに戻ってきたらいいんでしょうか?」

「はい。お待ちしておりますね」


 二コリと笑った受付の人にアレシアが軽く頭を下げ、食事する方へ向かった。それについて行っているが、先程の音を聞いた者達が私をずっと見ている。顔が火照ったままな上にずっと見られると居心地が悪い。


「銀貨2枚で2人分お願いします」

「はいよ、ちょっと待ってな」


 ふっくらした女性がアレシアからお金を受け取り、調理場へ向かった。それを見届け、開いている席を探す。

 ちょうど近くに開いている席があった。アレシアもそっちに向かっている。


「お腹空いたね」

「ああ、昨日から何も食べてないからな」


 自身のお腹から空腹を知らせる音がずっと鳴っている。先程アレシアが銀貨と呼ばれるものを2枚渡していた。それだけでどれくらい出るか分からんが、今後の食事の参考にはいいかもしれないな。


「そういえばなんだが、ブルをそのまま置いてきてしまったが平気なのか?」

「あ……」


 受付の人が初心者がよく行く場所だと言っていたが、そんなところに放置したままここへきてしまった。空腹過ぎてそれどころでなかったが。

 ここではどうかわからないが、魔物が喰らっているだろうと納得することにした。


「はいよ、2人前お待ちどう」


 目の前にドンと置かれたのは、骨付き肉と野菜などが入っているスープ、そしてパンだった。後から木樽のジョッキを2つ持ってきたが、それぞれで中身が違った。私のはなんだ? 紫色をしているが変なものではないよな。


「アーロ君のはミードだね」

「ミードはお酒か。子供でも飲んでいいのか?」

「大丈夫だよ。私が飲んでいるのは、13歳からしか飲めないやつだけど、アーロ君のは11歳でも飲めるやつだから」

「そうか」


 普段あまり酒は飲まないが、昔は水よりも酒の方が主流だとだけは聞いたことがある。ここもそうなのだろう。しかし、生活魔法とやらがあるなら飲み水も作れるのではと思ったが、ろ過するものがまだできていないということなのだろうな。


「なんの肉だ? これ」

「なんだろうね。あまり気にしたことないかも」


 英国にいた時もそれほど食事にこだわったことはないが、これは不思議な感覚がする。柔らかい所もあれば硬い所もある。間違えて骨をんでしまったのかと思ったが、最後まで食べ終わっても骨は持ち手のところしかなかった。

 味に関しては何とも言えん。マズイわけではないが、美味いとも言い切れない。何かを感じはするのだが、首を傾げてしまうほどに薄いのだ。言うなれば英国と似ている。


「少しでも腹を満たせて満足だ」


 腹を満たせれば味は薄くてもいい。私が早く食べ終わりすぎてアレシアが慌て始めたが、ゆっくりでいいと伝え、ミードを飲みながら周りを観察することにする。


 冒険者ギルド。

 ここには様々な人種が集まっている。獣の姿を持つ者もいれば、背が小さい者もいる。そして、耳が長いもの。それぞれが特殊な武器を持っていた。両刃剣ともいえない刃先が片側にしかないものにレイピア。弓。デカい杖。ナックル。短刀。アレシアも持っている槍。その他にもいろいろとある。探し始めたらきりがないだろう。


「アーロ君、行こう」

「食べ終わったのか」

「うん」


 席から離れ、受付のところに2人で向かおうとしたとき、大柄な男が近づいてきた。その男をよく見ると顔が真っ赤に染まっている。そして、歩き方もふらついていた。酒の飲み過ぎだろうな。その証拠に、手には木製のジョッキを持っている。


「おい、お前。にらんでんじゃねぇぞ」

「な、なに? 僕、誰も睨んでないよ」


 周りを見ていた時に目線があってしまったのを睨んだと勘違いしているのだろう。どうしたものか。大人のときであれば力業で解決するが、今は子供。どうやったって勝ち目はない。


「嘘つくんじゃねぇよ! 睨んでただろ」

「お姉ちゃん、怖いよ」


 力は大人のときよりも半分以下になっているが、だからといって何も反撃しないわけではない。 アレシアに隠れながら、先程食事用に使っていた木製のフォークをさりげなく手に取り、背に隠す。目には当ててはいけない。喉もダメ。となるとどこが有効的だろうか。

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