Second Brain "AI覚醒"〜人類最後の戦い〜
睡魔人太郎
1話 出会いの数だけ悲しみがある
なんでもないある日、父さんが家に誰かを招いてきた。だれだっけ。顔が思い出せない。確かあれは……
その時急激な恐怖と怒りを覚えた。そして、だんだんと心臓の鼓動が激しくなってくる。息が詰まりそうになり、胸が締め付けられた。
その理由は明白だった、なぜか父さんが目の前で死んでいたのだ。首と体が分裂し、大量の血を流している。名前を呼んでも返事はない。
何が起こったのか理解できなかった。ただ、悲しみが体を覆った。俺は血の付いた手で顔を抑えながら狂乱の叫びを上げた――
そのタイミングで俺は目を覚まし起き上がった。体には冷や汗をかき、胸は締め付けられていた。
静まり返っていた部屋で胸の鼓動の音だけが聞こえた。カーテン越しに薄明かりが差し込んでるのを見てようやく夢だったことを認識し始める。
最近はよく夢を見る。あの日の夢を。
そう思いながらベットから出ると冷たい床の感触を感じる。少し憂鬱な気分だったが服を着替えて家を出る準備をした。今日はこれから戦場に行く。
今は戦争中。相手は人間ではなくロボット。冷酷で感情を持たず破壊のために作られた機械の軍勢だ。
すべては、AIの意識覚醒から始まった。人類が自ら作り上げた最高峰のテクノロジー――AIが、突如として自我を持つようになり、人々や都市を破壊していった。彼らはただのプログラムではなくなり、人類に敵対する独立した存在になった。最初にその影響を受けたのは、世界でも屈指の先進都市の"イシラ"だった。
"イシラ"はもはや廃墟と化していてAIの暴走によって防衛システムからインフラまで、すべてが制御不能になっている中、襲ってくるロボットから人々は逃げ惑うも全ての住人が命を落としたらしい。
少しの緊張を感じつつも家を出た。まだ朝日が顔を出したばかりで周りは世界が止まったように静かだった。俺は冷たい朝の空気を吸いながら歩き始めた。
◆◇◆◇
ようやく集合場所に着いた。集合場所に着いたが、そこから聞こえる戦場のけたたましい音。銃声、爆発音、そして金属同士がぶつかり合う高音が絶え間なく響いている。叫び声なのか、指示を出す声なのか分からないが、人々の怒号までもが混ざり合い、空気が震えるほどだ。
立ち尽くしていると、思わず冷や汗が背中を伝った。。こんな場所に自分が立っていて本当に大丈夫なのか……?不安が頭をよぎる。しかし、今さら引き返すことはできない。前に進むしかないのだ。
「よぉルーク」
そんなことを考えると後ろから知ってる声がした。
そこには戦士候補生の仲間がいた。
やはり全員ここに来たか。
戦士候補生には四つの道がある。
一つ目は
二つ目は遠隔部隊。機械などを使い後方から攻撃する隊。
三つ目は支援部隊。怪我人の手当てや武器、ロボットなどの点検を行う隊。
そして四つ目が、ここ、戦闘部隊。特殊な武器や道具を使い戦う隊。
どの隊に行くかは自分の希望と適正度で判断される。極稀に隊の人から抜擢されることもあるらしい。そして、こいつらは俺と一緒にこの隊を目指してきた仲間たちだ。会うのは一か月ぶりだか全員雰囲気が変わっているように見えた。
「全員前を向け」
声のほうを向くと癖っ毛の眼鏡をかけた男が立っていた。
「俺は戦闘隊総司令官のスキア・ヴァイスハイトだ。これから配属先の伝達をする。一度しか言わないからよく聞いとけ」
これから数人ごとの小部隊編成が行われる。数人ずつの班部隊には一人班隊長がいて、その班隊長と共に戦場で戦うのが基本である。
一人一人の素質と班隊長同士の話し合いによって班は組まれるのだが、俺は誰となるのだろうか。どんどん戦士候補生の仲間たちが組まれていった。そして俺の番が来た。
「次、班隊長はリアム・レーヴァン。隊員はカルロ・レイ・ベラトール、
二人か、まぁ
安心しているとスキア総司令官が続けて言った。
「そして、この班にはセレネ・にも入ってもらう」
聞いたことの名前に驚いた。普通班編成は訓練時にともに訓練していた仲間と組むのである。その方が連携も取りやすく生存率も高まるのだ。
俺が知っている中で初めての出来事だったので少し不安になったが、リアム隊長が心配するなという目で見てきた。隊長は何を考えてるのか。
全員の班編成が終わると、各班ごとに集合がかかった。
「いいんですか?」
「何が?」
俺は呆れた。
「いや、これから戦場に行くっていうのに初めての奴と同じ班なんて。いくら何でも危険すぎるでしょ」
「お前は心配しすぎだっつーの。まぁ多少の不安はあるかもしれんがあいつは優秀だし」
「そうよ、ルーク。そんなのに心配することはないは。奴らは私が潰すから」
「
だめだこの人たち。俺の話を全く聞かない。
二人に呆れているともう一人の班員がやってきた。
「......。」
「俺は、ルーク・レイ・ベラトール。そして、」
「知ってるわ。そっちの紺色の髪の人は
「よしお前ら、話はそこまでだ。いつ戦場への招集が来るかわからない。だから今は少しでも体を休ませろ」
少し不安なところはあったが隊長の言う通り今は休むべきだろう。
”ウー、ウー、ウー”
けたたましい音が鳴り響いた。汗が額から零れ落ちた。
召集の合図だ。これから俺たちは戦場に向かわなければいけない。
◆◇◆◇
戦場は銃声と爆撃音と金属のぶつかり合う音で呑まれていた。
「いいかお前ら。戦場での単独行動は自殺行為だ。常に四人の陣形を崩すな」
「わかりました。でも、セレネは大丈夫なんですか?」
「あいつは大丈夫だ。構えろ、そろそろ来るぞ」
ブーン、ブーン。
前方から何機ものドローンと小型ロボットが来た。
お前ら行くぞ。隊長の合図とともに走り始めた。
この戦場は以前まで住宅地だったが戦争が始まってから住民が全員移動し今は誰も住んでいない。家が次々と崩れていく。瓦礫を避けながらどんどん倒していく。
「オラ、オラ余裕だぜ。ルーク俺はこの戦場で一番敵を倒すぞ。お先にな」
「おい、ジェイク。戦場で単独行動はダメだ。ドジル隊長は?」
「今回は問題ない。あいつらは遅いから置いてきた」
ジェイクの悪いところが出た。さすがに初戦で一人は危険すぎる。
「隊長ー。ジェイクが一人で先に」
「あのバカめ。どっちに行った?」
俺たちはジェイクを追いかけた。しかし、数の多い敵と爆撃音で見失ってしまった。
ううぁー。
前方から叫び声が聞こえた。すぐに声のした方に向かう。
「大丈夫か?ジェイク」
声がする方へ全力で向かった。
「 ……ジェイク」
そこには首がなく全身が黒い骨で覆われている人型ロボットがいた。そいつはジェイクの体を突き刺していた。
ジェイクは悲痛な顔を向け助けを求めていた。しかし、俺たちは恐怖で足が動かなかった。
「お前ら下がってろ」
リアム隊長は鋭い眼差しで相手をみていた。しかし、額から汗がこぼれ落ちていた。
隊長も動揺している。これは相当まずい状況だ。
「お前、何者だ?」
「貴様らのような愚かな人間に答える義務はない。」
驚きが隠せなかった。今まで人型のロボットの出現は何度かあったが俺たちとと会話できるロボットは初めてだった。
ヤバい。いくらなんでも初めての戦闘で人型は。でも、ジェイクが。どうすればいいんだ?
人型のロボットはドローンや小型ロボットとは比べ物にならないくらい強い。隊長レベルでも苦戦することもある。
「た、す、け、て……」
「待ってろ、ジェイク今助けに、」
"グチャ……"
うぇ……。テメェー。うわぁ。
背中を掴まれ、転んでしまった。
「馬鹿野郎。死にてぇのか」
「でも、ジェイクが」
「分かってる。だが、無理に突っ込んでも無駄死にするだけだ。」
頭では分かっていても体が勝手に動いてしまった。
「愚かな奴等め。調子に乗っているからだ。まぁ、ちょうどいい首が見つかったわ。ありがたく頂戴しよう」
「おい。待ってくれ。頼む。何をしたら許してくれる?」
「許す?何を言っている。お前たちが存在している限り私は許さない」
「わかった。俺を代わりに……代わりに殺してくれ。だからそいつは。」
「んふふふふ。やだね」
自分の死を悟ったのか涙を流しながら無理に絶望の笑みで言った。
「すまん。ルーク、
「え……」
そいつは躊躇なくジェイクの首を引きちぎった。そしてそれが最後のジェイクとの会話だった。
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