第21話判定
「ユウナお姉様、ユウナお姉様も聖女だったなんて、私、知りませんでした。これからは、私達二人、姉妹で力を合わせましょう!」
どの口がそんなふざけたことを言うんだか……
「私が最初に力を打ち明けた時にそう言ってくれていたら、まだ納得出来たのに」
自分だけでなく、姉も聖女だと、そう皆に打ち明けてくれたら、私は姉妹で聖女を名乗っても良かった。だけどエミルは、私が皆に酷い扱いをされていたのをその目で見ていたのに、助けるどころか、私が孤独になるように加担した。
そんな非情な妹といまさら、仲良く協力し合えると思う?
「ユ、ユウナお姉様、私は、本当にユウナお姉様が大好きなんですよ?」
「……」
そうでしょうね。それは、分かっている。
エミルが私を好きだという感情を疑ったことは無い。エミルは私が好き。多分、ここにいる誰よりも、私から奪ったルキ様よりも、エミルは私が好き。
「だから、もう一度、家族のために、私のために生きて下さい、ユウナお姉様。大好きです、ユウナお姉様」
何度も何度も聞かされた好きって言葉は、私にとってはまるで、呪いの言葉みたい。
好きって言えば、何でも許されると思ってるの? 好きって言えば、また家族に戻れると思ってるの? 好きって言えば、私がまた、エミルの影として生きると思ってるの? 馬鹿にしないでよね。
「嫌に決まってるでしょ。なんで私が、エミルのために生きないといけないの?」
「……え?」
「そもそも、貴女達とは家族の縁を切りました。家族に戻る気も毛頭ありません。私は、私のために生きます」
「どう……して、ユウナお姉様。今まではずっと……私のために……」
「ずっと我慢してたの。でも、我慢の限界が来たの」
愛情は枯渇した。もう微塵も残ってない。
「コトコリスの聖女が偽物だと証明するために、エミルが祈った場所だけ、力を与えないでおきました」
「っ!」
「エミルにほんのひとかけらでも聖女の力があるなら、貴女が祈った場所を緑あふれる大地に生まれ変わらせることが出来るよね?」
わざわざ大々的にパフォーマンスしたんだから。
「そ、それ……は……わ、私の力は、ゆっくりと元気を与えるものだから……」
「では、あの場所が蘇るまではエミルは偽物のままですね」
永遠に蘇ることのない大地。
可哀想だから、エミルが完全に偽物の聖女だとファイナブル帝国で周知された後、力を与えることにします。
「もう一度言います、エミルは聖女じゃありません、偽物です」
「! そんな……酷いよ、ユウナお姉様……!」
これで、コトコリスの聖女が偽物であると証明出来た。
今後、お父様が聖女の力を笠に着て、傲慢な態度を取ったり、膨大な報酬を得ることは出来にくくなるでしょう。
本当は私がエミルに与えた力も何とかしたかったんだけど……
他者に力を与える魔法を持つ私がエミルに与えたのは、回復魔法の強化。これにより、エミルは奇跡とも呼ばれる回復魔法を使えるようになった。
与えた力を奪い返したり出来ないかなっと思ったけど、それは無理みたい。
「エミル夫人、この大地が回復するまでの間、貴女が聖女を名乗ることを禁じます。これは皇室からの正式な通達だと思って下さい」
皇室からの通達となれば、もし破れば、相応の罰を与えられることになる。レイン様はエミル、そして後ろにいるお父様、お母様に対しても、忠告のように告げた。
「う、嘘だ、そんな! エミルが偽物の聖女で、本物の聖女がユウナだと!? そんなもの、信じられるか!」
「そうよ! あんな出来損ないで可愛げのない娘の方が聖女なワケないわ! きっとユウナは何かイカサマをしたのよ!」
酷い親。
ここまで証明してもまだ私が聖女だと認めないなんて、なんて諦めの悪い。
私を家族の一員と認めず、自分達の娘は聖女であるエミルだけだと思っていたんでしょうから、諦めが悪くなるのも当然か。
「コトコリス男爵、男爵夫人、学習能力が無いんですか?」
「ひっ!」
「ユウナを傷付けるような発言をするのは許さない。また、牢にぶち込まれるか?」
(レイン様……)
本気で、私のために怒ってくれるんですね……
こんな元家族に何を言われても平気なつもりだけど、こうやって私を守ってくれるのは、やっぱり、嬉しい。
「も、申し訳ございません! 牢だけは! 牢だけはお許し下さい!」
「お許し下さい!」
こうして皇室の立会人もいる公の場で、たとえお父様やお母様が私を信じなくても、私が本物の聖女で、エミルが偽物の聖女だと証明された今、もうコトコリスの聖女の力を笠に、レイン様及び皇室を脅すことが出来ない二人は、頭を擦り付けて謝罪するしかない。
出来損ないと家から追い出した娘の方が本物の聖女だったなんて、残念でしたね。
エミルなんて大嫌い、お父様もお母様も、勿論大嫌いよ。
「コトコリス男爵、私は以前にもお話したはずですよ。次に会うことがあれば、立場を弁えて、敬語で話せと」
「!」
苦虫を嚙み潰したような顔で私を見ても駄目。
「二度目の忠告も無視しましたね。さて、どうしましょう。未だに私に謝罪する様子もないようですし、もう牢に入って頂いた方が良いでしょうか」
陛下やレイン様には頭を下げても、お父様は決して私には謝らなかった。
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