誠のホーム

 「クックックッ!甲斐の者どもが慌てふためいておるわ!」


 スパコンッ


 「偉そうな事はいいから早く信濃に向かえ!お前は後でエレベーター降ろし留守番だ!」


 「へいへい!分かりましたよ!」


 確かにかなり慌てて居る人ばかりだ。勝頼はまだ戻って来てないのか!?


 15分程で真田さん達の故郷上空に到着する。なんとまあ・・・閑散としたところだ。民家らしき家々がポツリポツリ・・・その中に一際大きな茅葺き屋根の家がある。恐らくあれが真田さんの家だろう。


 まさに歴史を感じる家だ。だが甲斐と同じく、人数は少ないが人が慌てている。中には土下座したり手を合わせたりしてる人も見える。


 「では・・・真田さん?また落ち着いたら教えた電話にて連絡お願いします」


 「は、はっ!!こんなにも早く帰れるとは思いもよりませんでした」


 「ははは。喜んでいるようでよかったです。住民の人達に驚かせて申し訳なかったとお伝えください。後は家臣の人達の纏めも頑張ってください。故郷を捨てろとは言いません。ただ、今の生活より上の生活は保証します」


 「はっ。お任せを」


 そう言い、俺が自らエレベーターを操作に3人を降ろす。小雪は優しい笑顔で手を振り謙信は腕を組み見守る。


 俺の家臣になったとしてここはどうなるかだな。捨てるのは勿体無いし、かといって誰かをここに常駐させるのは不便だ。いや・・・ここを拠点に、岐阜に跨り聳え立つ奥穂高岳、槍ヶ岳などを資源目的で開拓しようかな?


 「クスッ!暁様は今後の事考えてますね?」


 「え?あ、あぁ。まあな。ここを捨てるのは惜しいし、かといって誰かを置いておくのもな?安定すればここに、出来た瞬間から老舗感満載の蕎麦屋さんとか作ってもいいけどなんせ往来が少ないよな」


 「ここを上手く使うにしてもまずは朝倉をどうにかしないといけませんね」


 「そうだな。まあそれは信長様の考え次第だな。俺はそろそろ俺だけの城が欲しいんだ」


 「まぁ!?では例の【誠のホーム】を!?」


 「そうだな。でも先に信長様の城を作ってからだ。俺のホームの方が目立っててはダメだろう?」


 「確かにそうですね!では私もそろそろ本腰を入れて考えておきましょう!」


 誠のホームとは、ゲーム内で俺が改造して改築、増築、合体させて作った城と街と町が一体化したアイテムだ。


 プレイヤーにより作り方は様々だ。西洋のような街全体を壁で覆ってしまう奴もいれば、住民の家を盾代わりとして配置する奴もいた。


 道なんかも迷路みたいに作る奴もいれば、一直線の道を作り行き止まりにしてしまうという性格が捻くれた奴も居た。


 俺は一般的な作りだ。要は内政重視、増築重視で作っていた。ただ、防衛に関してはゲーム内でも上位と自負している。作りが普通故にかなりのプレイヤーに襲われた。幾度となく襲われた。だがその都度撃退し、クランで襲われた事もあったが・・・苦い思い出だ。


 そうこう小雪と話していたがまたすぐに躑躅ヶ崎のの上空だ。


 「上杉様?そのまま降りて大丈夫でしょうか?」


 「今は頭が冴えておる。以前のような閃きは感じないが他愛ない」


 返答に困る事を言われたが本人が大丈夫と言うなら大丈夫なんだろう。佐助にエレベーターを降ろしてもらう。


 「佐助は上空に待機!念の為すぐに帰れる用意をしておけ!」


 「了解。怪しい奴は撃ち殺しても?」


 「いや、明らかに攻撃されるまでは待て。ここで攻撃すればここと本気で争う事になる。この歴史的な建物は壊したくない」


 「分かりました」


 俺達が降りるとすぐに槍を持った人達が現れる。まぁ、留守番の人達だろう。勝頼はまだ帰って来てないのだな。


 「な、な、何奴だ!?」


 「我は上杉謙信。何度かこの地へ参ったが其方は初めて見るな?」


 「はぁ!?貴様が上杉なわけあるか!」


 確かに完璧な女の姿だからな。そりゃ信じるわけないわな。


 「上杉様?変わりましょうか。織田軍 大橋兵部少輔暁。お前達の敵だ。そして、この戦を終わらせに来た」


 「て、て、敵だ!織田だ!皆の者!備えーー」


 バコンッ


 「お主は阿保か?お主は我が宿敵にここを任された将であろう?敵がこの地にやって来た時点でお主が敵対行動をとればここが焦土と化すのが分からぬのか!?」


 的確な答えだな。俺は攻撃するつもりはないけど敵対されれば守るためそうするしかなくなる。さすが上杉謙信だな。


 「・・・・お、お主は・・・秋山か!?」


 「うむ。相すまぬ・・・」


 「お、お館様はどうされた!?お前が仮に上杉だとして秋山は・・・お前は裏切ったのか!?」


 「秋山は裏切っておらぬ。それと、我は負けた。全力を以てして負けた。それは我が宿敵も同じである。今ここに四男坊は?」


 「四男坊!?勝頼様の事か!?」


 「うむ」


 「まだ戻って来ていない!・・・という事は・・・」


 さすがのこの人も察したか。俺は小雪に目配せして棺を持ってきてもらう。


 「お、叔父上!?まさか・・・・」


 叔父上?親族衆か!?誰だろう!?ただ・・・いやな雰囲気になってきたな・・・。


 「あんた名前は?」


 「武田信堯・・・お屋形様の甥だ!」


 「では信堯殿?あなたの取るべき行動・・・分かりますね?攻撃するなら既にしている。それをわざわざ目の前まで来た。その意味が分かりますね?」

 

 「大橋殿?少し話を・・・信堯殿に・・・」


 「いいですよ。少なからず俺はあなたは信頼している。ただ・・・変な行動すれば分かりますね?」


 「事ここに至って短絡的な事はしない。甲斐を守らねばならぬ。勝頼様をお迎えしないといけない」


 やっぱこの人は分かってるわ。


 「開門致せ!勝頼様のご帰還だ!!」


 お!?もう帰って来たのか!?いいタイミングだな。さて・・・俺は初めて会うけど何を言われるだろうな。まさか戦うわけはないよな!?

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