上杉謙信の仕置き2

 「貴様がどのような人生を歩み、どのような境遇かは一考の余地はない。下々の民は日々の暮らしすらままならぬのだ」


 「・・・・・・・」


 「今一度問おう。今後上杉はワシの下に付くのかどうかだ。其方の領土に佐渡があるであろう?」


 「織田様!佐渡ヶ島にございます!」


 「うむ。そうだ。佐渡ヶ島だ。この地を織田領として認めるならば考えなくともないがな」


 「あの島をか?・・・・金か?」


 佐渡ヶ島は俺が提案した事だ。本間一族が島を統治してるとは思うがこの上杉謙信も協力関係にあるはずだ。


 理由は言わずもがな。金、銀、銅、ニッケルやら他にも鉱物関係だ。錬成に使う材料を個人で保有したいため是非信長さんに治めていただきたい。


 だがその佐渡を手中に収めるにはまず拠点となる場所を作らないといけないのだ。行きは美濃や清洲近くに滑走路でも作り行ってもいいが着陸場所を佐渡にも作らないといけない。


 なんなら船で行き帰りした方が作業員も運べ、俺が居なくても仕事をしてもらえれるから便利なのだ。ただ、さすが謙信。金とすぐ分かったか。


 「貴様はそこまで聞かなくともよい。どうする?死なば諸共と言うならばその道を用意するが?」


 「其方は我を信用できるのか?」


 「信用できるもできまいもワシは貴様の事を知らぬ。まあだが一つ言えるとすれば武田よりは信用できる。ワシの倅と武田の姫を婚姻関係で結んだが、見てみろ。武田は己を通して織田と敵対した」


 「ち、父上!?」


 「黙っておれ」


 「其方が織田殿の後継者か。我が宿敵の四女と結ばれたのであったな。だが残念であるな」


 「ざ、残念ではない!そ、某は正室は松姫殿と決めておるのです!!」


 ハイ!キタコレ!!純愛か!?信忠君!元服済ませたばっかだけど謙信や信長さんの前でよくもまあ啖呵切って言えるな!?まあ、この件は俺が一肌脱いでやろう。絶対にこの2人を巡り会わすぞ!


 「これはこれは失礼致した」


 「こう向こう見ずの性格だ。戦に関してはワシがどうとでもできる。だが此奴はワシと違い他所を見る目に長けておる。お主が織田に屈せば自ずと近辺は大人しくなるであろう。民の事を思うならば分かるな?上杉謙信よ」


 「愚問である」


 「大橋、治してやれ」


 「はっ。謙信様こちらへ」


 「一つ・・・我が宿敵は討ったのか?」


 「詳しくは聞いておらぬが討ち取ったと聞いておる。後で案内致そう」


 深くは聞かない。お互いに。ただこの上杉謙信は武田とは争ってはいたが認め合っている感じだな。


 

 みおちゃんを救護人、護衛に念の為小雪を付けて俺達は本陣に戻る。色々話していたからかなりの血が出ていたから完全に生えるまで1時間は掛かると思う。もちろん大小は預からせてもらったが。


 手が生えてから一度こちらの本陣に赴くとの事。そして続々と名のある将の人達が来る。上杉軍とは対照的に武田軍は神妙な顔つきだ。涙流してる人も居る。


 そういえば俺に会わせたい人が居るとか言ってたが誰だろう?


 「腹が減った!大橋!何か作れ!」


 「今からですか!?えっと、何が食べたいですか?」


 「さすが織田殿ですな。お若い」


 「六角か。どうじゃ?此奴の与力は面白いだろう?」


 「実に。あのような夢幻兵器をお持ちなのに傲る事なく時には強く、時には謙遜に。いや実に面白い」


 「いやいや六角さん!?褒めても何も出てこないすよ!?せっかくだから六角さんも食べますか?チキンラーメンです!お湯を注ぐだけで食べられるのですよ!黒川さん!お湯沸かしてくれます?」


 「御意」


 俺達は馬廻りの人達を横目に見ながらチキンラーメンを啜る。うん。美味い!


 「これじゃ!これ!実に美味いのう!」


 「うっ、うむ。ブッ・・・いや失礼・・・」


 六角さんは上手く啜れないのか咽せている。


 「ほっほっほっ。実に良い匂いがしておりますな?」


 「チッ。半兵衛か。ワシのはやらぬぞ?」


 「いえいえお館様のをいただくとは畏れ多い。暁殿?私のもお願いしても?」


 いやなにパシリに使おうとしてるんだよ!?こう見えても俺は従五位下だぞ!?


 「半兵衛さん?しゃーなしですよ?」


 和気藹々としながら戦場とは思えない雰囲気で徳川さん達の帰りを待つ。


 「信長殿ッッ!!!」


 「なんじゃ騒々しい!」


 「そこら中に美味そうな匂いがしておりますぞ!」


 「そりゃあな。ちきんらーめんだ!やらんぞ!これはワシのだ!」


 「あっ、徳川様お帰りなさいませ!首級見事にございます!」


 「本陣はこちらでよかったのだな?」


 「あっ、北条様もお疲れ様です!どうぞ!どうぞ!」


 「ほう?その方が小田原城、城主 北条氏康か。中々先見のある男だな」


 「如何にも。後北条氏第3代目当主 北条相模守氏康であります。遅ればせながらーー」


 「良い良い!近く一度堅城として名高い小田原の城に招待してくれ!ワシも見てみたい!遅れたが・・・ワシが織田上総介信長じゃ」


 いやチキンラーメン啜りながらなんも説得力ないすよ!?


 そして来るわ来るわ。


 「武田軍 木曾義昌連れて参りました!」


 「武田軍 下条信氏連れて参りました!」


 「武田軍 小山田信茂連れて参りました!」


 それからも秋山虎繁、室賀信俊、一条信龍、矢沢頼綱など後世にも名前が残る人達も多く居る。ただ肝心の武田信玄の首は届かない。酒井さんも見当たらない。


 「さあ、お待ちかねの・・・大橋殿?こっちへ」


 「うん?徳川様?どうしました!?」


 「そう言わずにこっちへ・・・」


 俺は信長さんに一礼して離れた場所に呼ばれた。


 「あっ!あなたは!!あの時の!!?」


 「なんじゃ!?斬首じゃない・・・あっ!其方は!?」

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