戦国時代に迷子！？

強すぎる故の突撃

　ワシは・・・ワシは何をやっていたのだ・・・。ハナから武田だけでも手一杯なところを上杉も居ると言うのに無駄に押していると思い勘違いしていた・・・。夏目を失うところだったが、いやまだ分からん！また大橋殿に借りを作ってしまったか。

　「殿！大橋様の奥方殿より早急に三方ヶ原に作った本陣に向かえとの事です」

　「なに！？三方ヶ原にか！？いや、分かった。全軍にも伝えろ！最悪浜松を落とされたとしてもワシは大橋殿を信じる。必ずや三方ヶ原台地にてあの2将を屠ってくれると！」

　「は、はい！」

　「やぁ〜ッ！」「せやッ！！」「ぬぅりゃッ！！」

　ガキンッ　ガキンッ　ゴンッ　ガキンッ

　「夏目様！上杉軍に囲まれます！一度お退きください！」

　「ならぬ！我らはこの地で少しでも敵を減らすのだ！美味しいところだけ織田に持ってかれるのは三河武士の名折れぞ！」

　「夏目様？こんにちわ？」

　「奥方殿！？どうしてここへ！？早く退けッ！！」

　「あなたこそ退きなさい？本来ならこんな事しないのだけど大いなる作戦の前に無駄な死は許さないわよ？あなた達の覚悟は分かったけど今ここで使う時ではない。分かったかしら？」

　「だが！この俺の怒りはどこへ向ければよい！我が領土なのに！生まれた故郷を他人の手じゃないと守れないとは情けない！！」

　「三方ヶ原台地にて決戦を致します。ご理解を。これ以上言う事聞かないのであれば作戦が台無しになります事をお考えください」

　「クッ・・・。すまん。分かった。今は退く」

　「あなたの気持ちは分かります。必ずあなたの隊を使う時がきます。じゃあ私について来なさい」

　シュゥーーーーーー

　「な、なんだこれは！？おい！徳川軍から煙が出ておるぞ！」

　「チッ。気取られたか！？まあいい。指揮官の首級は取れなんだが粗方雑兵は削った！退け！」

　「徳川様お疲れ様です。大丈夫です？」

　「殿！ご無事ですか！？」

　「大橋殿？酒井？ワシは・・・」

　「まあ徳川様の気持ちも分からんでもないですよ？ただ、今回に関しては突出し過ぎないようにと再三に渡り言いましたよね？ただ・・・・光明が見えました」

　「光明？」

　「これをご覧ください！」

　俺は家康さんに鳥型カメラの映像を見せた。家康さんの本陣の逃げっぷりを見て先陣を切っていた武田軍が追いかけて来てるのだ。

　これで信玄、謙信が警戒しているかは分からないが三方ヶ原台地での決戦になる！と俺は確信した。

　さすがに浜松城を放置して戦にはならないだろうから選抜した何名かが挟み撃ちにならないように浜松城に見張りをつけるだろうがこれでいい。

　「小雪戻りました！！」

　「はーい。おかえり！」

　「殿！申し訳ありませんッ！！」

　「いや、夏目はよくやってくれた。ワシのせいで危うくお主を亡き者にするところであった。許せ」

　「もったいなき言葉でございます」

　「再会のところ申し訳ないですが全軍に電話で伝えてください。敵の追いかけてきた先陣が見え、できる限り引きつけられたら例のカモフラージュネットを外してもらうように」

　「ではここからが・・・」

　「えぇ。ここからは俺も出ますよ。秘密にしてきた事がようやく実ります。北条様も上手く先発隊に混じり敵を陽動してるように見えます。それともう一つ朗報です。敵の先陣は馬場信房。個人的な因縁がありますので俺がケリをつけます」

　「分かった。ここからは大橋殿に、織田にお願いする」

　それから俺は小雪に千代女さんを信忠さんから連れ戻し望月さんの横に居てもらう事にした。今度は望月さんが暴走するかもしれないしな。戦車隊や鉄砲隊で雑兵を削ればアパッチにて機銃掃射。その後に酒井さんと俺は武田本陣に空から奇襲だ。

　上杉は小雪に任せよう。その後は京に出向き少しでも信長さんの手助けでもしようか。

　それから30分もしない内に馬場信房の隊だろうと思う半農兵士らしき人達が現れた。半農の人は見れば分かる。みんな体付きが細いし、どことなく疲れているように見える。甲冑なんかも古いのだろうと分かる壊れ具合だ。

　例の20号拠点は既に晒してある。土嚢で砲台だけ出した戦車隊も晒してある。ここで馬場隊が踵を返しそうもんなら背中から襲うつもりだ。そうすれば武田軍の士気は一気に落ちるだろう。

　浜松城の大久保さんには決して出てくるな！と言ってある。浜松城に何人詰めているかは敵は分からないはずだからいつでも城からも兵が出せる余裕があると見せつける事が大事だからだ。

　「来る！来る！マジでぞくぞくと後発の人達も来るな」

　「（クスッ）暁様？顔がニヤついていますよ？」

　「そうか？そんなつもりはないけどな。ただまぁ、こうも上手くいくのは楽しいよな。徳川様のおかげですよ」

　「いや、そうか？そうなのか？ワシの失敗がーー」

　「失敗なんかじゃないですよ。仮にあの場に居たのが俺でもさすがに押し返すのは無理です。それを徳川様は2回も行いました。夏目様を褒めてあげてください」

　これは本当の感想だ。戦車なんかがあれば押し返せるが力技で押し返すのはまさに鬼神の如くだ。

　「暁様・・・」

　「望月様？早る気持ちを抑えてください。もう少しですよ。敵は必ず突撃してくる！最初はわざと旧式の銃を撃ち、弾込めに時間を掛けるように言ってあります。武田も上杉も優秀すぎる故にその隙を見逃さないでしょう。それで出張って来たところを俺と小雪が攫って来ます。望月さんは本陣を守るように」

　「御意」

　カツンッ　カツンッ　カツンッ　カツンッ

　「三河から出てけッ！！！」「ここは絶対に通さんぞ！！」

　言葉闘いが始まったな。もう少しだ。

　「馬場隊ッッ！！！！！先の汚名を返上する時だ！！徳川を狩れッ！！！！」

　掛かった！強すぎる故の慢心だな！まあ大小、多少は台地になっているが、高所が多いわけではないし、地の利がそこまであるわけではないから数が多ければ突破できそうには見えるよな。

　「宿敵？何か仕掛けがあるように見えるがあの者は武田随一の猛将ではないか？構わないのか？」

　「ふん。武田は皆が優秀だからな。皆が随一だ。馬場信房・・・かの者はワシが駿河に侵攻した折に今川の財宝を失うのがもったいなく銭に変えようとしたのだが『貪欲な武将として後世の物笑いになる』と言い燃やしてしまったのだ。ワシの事を1番に思ってくれる者ぞ」

　「そうか。なら何も言うまい。ワシなら何も手柄を立てん北条を斥候に使うがな？」

　「確かに沈黙が不気味ではあるが彼奴は小田原に固執しておるだけだ。後方にて待機させてある。所々に北条の兵は組み込ませてくれと言い張ったからあの馬場信房の隊にも何人か入れてある。あの多少の兵のみで報酬を強請ってくるならばワシは小田原を急襲してやる」

　「確かに北条があんな器の小さい者とは思わんかった。勇猛な男と一目置いていたのだがな。恐らくこれが徳川最後の抵抗だろう。3日。3日で三河を取るぞ」