戦国時代に迷子!?

でんでんむし

戦国時代に迷い込んだ!?

課金アイテムの副産物

 俺は大橋暁(おおはしあかつき)27歳。まあ、世間一般の27歳だ。彼女とか結婚なんかはしてないけど。そんな事はどうでもいいだろう。


 俺は世界中で流行っているウィルスにより飲みにも行きにくく家に居る時間が長くなりとあるゲームを購入してそれで遊んでいた。VR戦国統一編という名前のゲームだ。


 1500年〜1615年の好きな場所にキャラクターを作り自分で天下を取るのもよし。誰かに仕えて補佐に回るのもよし。史実みたいに歴史を進めるのもよし。とにかく自由度が高いオープンワールドみたいなゲームでそこそこ売れているゲームだ。もちろん課金要素もある。


 俺もそこそこ課金して色々なアイテムを購入している。戦国統一編と銘打ってるが他の編は今の所見当たらない。このゲームはオンライン要素もありNPC武将と戦ったりもする。戦い方はリアル路線ではなくファンタジー要素が多い事が意外にもプレイ者に好評だったりする。ただ気に食わない事もある。


 「おーい!また暁さんは課金したの?」


 「ほっといてくれよ!あの夢の水陸両用移動舟がどうしても欲しかったんだよ!」


 「でもあれかなり高かったししかも、据え置きゲームで携帯ゲームみたいなガチャだったでしょ?しかもハズレも多かったとか?」


 VCで話してる彼は会ったこそないがこのゲームでフレンドになった奴だ。ゲーム上の名前は如月前右府三左衛門だ。

クッソ長いゲーム名にゲームの名前自体に前右府と付いてるからおかしいんだが本人は気に入ってるみたいだ。


 俺か?俺は本名だが暁という名前は珍しいから俺は本名のままにしている。親父とお袋に感謝だな。


 「うるさい!大人の力舐めるな!でも苦節3万円にてやっとゲットしたんだ・・・」


 「うん。ハズレの中でもまだマシな装甲車でしょ?」


 そう。気に食わない事はガチャを回しても中々当たりが出ない事だ。


 「そうそう。なんかマシンガンとか付いてるし特殊塗料で槍とか弾くし火も点きにくいみたいなんだ。耐久おばけだから壁に使えるかもね」


 「3万円の壁とか勿体ない!けど本命は出なかったんでしょ?」


 「うるさい!黙れ!来月の給料で当ててやるんだ!ハズレでもまだ当たりだろう!?それに副賞で【刻黄泉の薬】ってのが貰えた」


 「程々にしなよ?それにそのアイテムはなんだい?新しく実装したもの?」


 「う〜ん。俺も初めて見たからな。説明欄を見ても文字化けして見えないんだ。バグかな?まあいいや。使ってみる」


 俺は所詮ガチャの副賞で貰えるくらいだから大したアイテムではないだろうと思い迷わずに使用した。すると俺のアバターが光の粒子になってきた。


 「ちょ!暁さん!?大丈夫すか!?」


 俺はVCでどうなってるか問いかけるが如月のVCからはノイズが聞こえ何を言ってるか分からない。


 「クッ・・・ソロイベントか!?クリアして如月を驚かせてやる!」


 そう意気込んで真っ暗なトンネル?みたいな場所を流されるように進み気がつくとさっき当たった?嫌、ハズレの装甲車の中に居た。


 「凄い衝撃だったな・・・。なんなんだ!?おい?如月?前右府さん?聞こえる?」


 「・・・・・・・・」


 「やっぱソロイベントか・・・・」


 うん?なんか外で聞こえるぞ!?他にもこのイベント参加した奴が居るのか?


 「貴様何奴か!?浅井、朝倉側か!?おい!返事をしろ!」


 「うん?なんですか?新しいイベントですか?」


 オレはNPCと思う人に聞いてみた。


 「なに!?新しいいべんとだと!?なんだそれは!?」


 「木下様!追いつかれます!急いで!」


 なんか今までにないイベントの作りだな。


 「そ、その方!貴様は浅井、朝倉側か!?」


 「いえ、どちらでもございません」


 「ならばよし!手を貸せ!今お館様は金ヶ崎より撤退中だ!生きて帰れば褒美が貰える!出世が出来るぞ!貴様もその見た事ない物を貸せ!」


 まさかこれは金ヶ崎の退きの陣か?史実イベントか?なら史実通り進めるか。ワンチャン史実にはない浅井、朝倉側勝利ルートを見てみたい感じもするが・・・。


 「分かりました。こっち側から来る敵を倒せばいいのですね?」


 「そうじゃ!数人だと思うが逃げてくる兵は織田の兵だ!そいつらは殺すなよ!」


 めんどくせーイベントだな。


 「織田を殺せ!」「敵が居たぞ!」「殺れ!!」


 オレはさっさとイベントを終わらすために装甲車の屋根に付いてるガトリング銃を敵に撃った。


バッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッバッ


 「うわぁ!」「うっ!」「オラの手が・・・」


 「木下様・・・・これは・・・」


 「半兵衛!聞くな!ワシにも分からん!だがこれでお館様の撤退は大丈夫なはずだ!」


 「木下殿!!!大丈夫か!?」


 「明智殿か。どうされたか?」


 「どうされたかではござらん!凄まじい音が聞こえこちら側に参ったが・・・あれはなんじゃ!?どうなっておる!?」


 「・・・・・ワシにも分かりませぬ。だが我らの敵ではないと申しておった」


 「あの上に居る者がか?それにあれが撃っているのは・・・鉄砲か!?鉄砲があんな連射できるのか!?しかも的確に真っ直ぐ飛んでいるぞ!?」


 おいおい。一体どれだけ殺せばいいの?まさか無限湧きか!?弾が無くなってしまうじゃん!予備の弾倉は・・・ゲッ!?後、5つしかないじゃん!一つの弾倉が6000発だから・・・35000発か・・・・。一合戦でトリガーハッピーすればすぐなくなるな。それにハズレ装甲車だけど全然強いじゃん!少し移動してみようかな?


 「おぉぉ!!!動いておるぞ!!!」


 「誰があれを引っ張ってるんだ!?」


 「半兵衛?あれはお館様の脅威にもなり得るな?対応を間違えるなよ?」


 「おや?珍しく私と同意見ですか。秀満?分かりますね?」


 「はっ」


 

 なんかNPCの動きみたいな奴らばかりだな。プレイヤーは居ないのか?さすがに追撃もなくなってきたな。外に出ようか。


 「うっ・・・・臭っ・・・なんだこの匂い・・・。うん!?臭い!?いやいやおかしいぞ!?」


 「ははは!さすがだ!助かった!どうされましたか?」


 「ちょ!ちょっと!お聞きします!このイベントの終了条件は!?」


 「おっ!?なんですか!?いべんととはなんですか!?」


 「なら・・・・ゲーム時間で今何時ですか!?」


 「げーむ?げーむ時間とは?」


 クッ・・・・これは異世界転移ならぬタイムスリップ的なやつか!?でもそれにしてはゲームの装備が使えるのがおかしい・・・。


 「あのう?貴殿のお名前は?」


 「え!?俺ですか?俺は暁・・・大橋暁です」


 俺はいきなり名前を聞かれて本名を言ってしまった。


 「大橋・・・大橋・・・お館様の姉婿の大橋殿と関係が?」


 これはまずい。姉婿とは誰だ!?リアルだとすれば出自が怪しいやつは殺される・・・。


 「怪しい奴だ!竹中殿!此奴もここで討ち取った方が今後のためだ!大橋重長殿とは関係あるはずがない!」


 「明智様の・・・秀満殿でしたね?それはなりません。これは木下家が先に見つけた方。木下家が対応致します。お帰りになってください」


 「なっ、何を言っているか!!?お主もこの者が何者か分からないだろう!?この敵を倒した物が我らに向けばーー」


 「あっ!朝倉の兵!秀満様!危ない!」


 ゴンッ!!!


 え!?なんだ!?誰も居ないぞ!?


 「さて・・・・そこの雑兵3名!朝倉の兵に秀満殿が殴られ気絶された。急いで明智様の所へ連れて行きなさい」


 「え!?」


 「いいですか?今朝倉の兵に襲われた・・・分かりましたね?」


 「は、はい!」


 おい・・・この竹中半兵衛だと思う人は・・・ゴリ押ししたぞ・・・。


 「これでゆっくり話せますね。あなたは何者ですか?私達に害を成す者か?それともーー」


 竹中半兵衛だと思う人が俺に問いかけてきた時、風を切る音が聞こえ俺が振り向くと薙刀を持ったさっきガトリングで撃ち倒したと思った人が俺に斬りかかってきた。咄嗟の事で頭を守り避けようとしたが肩を斬られた。


 「うっ・・・・痛ッ!!!いってぇ〜!!!!」


 「貴様は何者だ・・・ばけ・・ものめ・・・」


 俺を斬ってきた人は俺に斬りかかった後事切れたようだ。


 「痛い!痛い!痛い!これがゲームなわけない!リアルだ!ヤバイ!めっちゃ血が出てる!」


 「貴殿!動くな!おい!誰ぞある!焼酎持ってこい!」


 「うっ・・・・あなた様は・・・」


 「私は竹中半兵衛。織田信長様配下、木下様の与力だ。傷は・・・・」


 何で傷のところで言葉が詰まるんだよ!?うん!?待てよ!?これだけゲーム要素があるならアイテムもあるのか!?いや頼む!あってくれ!!


 オレは斬られた右肩の痛みに我慢して祈る。


 「インベントリー!」


 おぉ!!!やった!!あった!あったぞ!!完全回復スプレー!これだ!ゲームでは貴重すぎで中々使えない薬でオレは50個程ストックしてある。オレは迷わず取り出した。


 「うぉ!!?なんだ!?いきなり変な物が現れたぞ!?」


 「後で理由は言います!」


 俺は反対の手でスプレーを振りかけた。ゲームならすぐに傷が治るはずだが・・・・。


 「え!?傷が!傷が治ってきよるぞ!?」


 よし!効果もそのままだ!


 「貴様そこを動くな。それに竹中。貴様もだ」


 「明智殿・・・・」


 オレは傷が治り喜んだが俺が倒した人達を見て、明智光秀であろう人に刀を突きつけられリアルと再認識したところで急に吐き気を催し吐いてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る