境界の奇跡、時の残響

悠鬼よう子

第1話 静かな予兆

 アルカディアユーフォニア大陸−2番街は、自然と技術が調和した未来都市だ。高層ビルが空を切り裂きながらも、緑豊かな森や清らかな川が街を縫うように流れている。街中にはエコフレンドリーな電動車や自転車が行き交い、環境との共生が最優先されていた。


 宙太ちゅうたは村で育った少年で、星間物質インターステラー(※1)から生まれた「星坐ネビュラル」という特別な種族の血を引く。彼の一族、ニウエ一族は「星霊ネビュラ」との深い繋がりで知られており、星霊は星坐ネビュラルと霊的な絆を持つ存在で、宇宙と物質界マテリアル(※5)を繋ぐ役割を担う。


 特に霊能力に優れた者には「星弥呼マスター」(※4)の称号が与えられ、精神界スピリチュアル(※6)と物質界を自由に行き来し、家族の未来を導く使命を負う。宙太は幼少期から星霊との交信能力を持ち、その力は一族の誇りとされていた。しかし、その力は祝福でありながら畏怖を抱かせるものでもあった。周囲には見えないものが見える事実が、彼に孤独感を与えた。


 宙太は、過去の研究者が積み上げてきた知見を基にするニウエの研究所ではなく、新しい研究分野や革新的なアイデアで未来を開くアカデミアに通っていた。しかし、アルカディアから隔離された郊外にある閉鎖的なニウエの村出身という背景から、アカデミアでは偏見と差別にさらされ、孤独な日々を送っていた。それでも彼は、自分の力を未来へ役立てたいという一心で学び続けていた。


アカデミアの穏やかな日常の裏側で、宙太の心には漠然とした不安が漂っていた。どこか遠い未来を見つめるようなその不安は、彼の胸の奥底で静かにとどろいていた。


 *****************


※1. 星間物質(インターステラーInterstellar):星霊の生成や活動の根源で、星坐種族の起源と深く関わる。未知のエネルギー変換特性を持つ。

※2. 星霊(ネビュラNebula):星坐と繋がり、宇宙と物質界を繋ぐエネルギーを媒介する霊的存在。意思を持つと言われる。

※3. 星坐(ネビュラルNebulal):星間物質から生まれた特別な種族。進化の過程で独自の能力を発現した存在。

※4. 星弥呼(マスターMaster):霊能力に優れ、精神界スピリチュアル物質界マテリアルを行き来できる存在。一族の指導者として尊敬を集める。

※5. 物質界(マテリアルMaterial):時間軸と三次元空間を基盤にする領域。星霊の影響を受けながらも独立した法則で運行する。

※6. 精神界(スピリチュアルSpiritual):星霊ネビュラの活動領域。物質界に影響を与える反面、感情や記憶とも密接に結びついている。




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