第3話 磯端健成は『特殊スキル』が欲しい。
僕には、自慢のお兄ちゃんがいます。
大成兄ちゃんは、「ゼランティア大陸」という異世界に転生して、勇者として名を馳せ、そして日本に生還したんです。
僕は、毎晩お兄ちゃんから、「ゼランティア大陸」の話を聞いて、
僕もこれからは間違っても、ゲームで砂漠を歩くときは「鉄の鎧」なんて装備しないようにしようと思いました。
でも僕も、お兄ちゃんの意思を継ぎたいな!と思ってます。
「にいちゃん!!にいちゃん!!」
「はいーなんですかー?」
「あれから寝ずに考えた!やっぱり俺!ゼランティア大陸にいきたい!!」
「・・・話を聞こうか。」
「もう匂いとか、鎧で蒸れるとか、そんなことは気にしない!俺はにいちゃんの意志を継ぐんだ!」
「どうして?何が君をそんなに駆り立てるんだ?」
「俺は、特殊スキルが欲しい!!」
[異世界の真実、兄が語る現実]
「はいはいはい。特殊スキルねー。」
「異世界に転生したら、俺だけ●●みたいな特殊スキルを与えられるんだ!俺もそれを使いたい!」
「そうかー。でもねケンちゃん。特殊スキルだったらね、今ここにいるケンちゃんも使えますよ?」
「え!?俺にそんな能力が!?」
「あります。知りたいですか?」
「知りたい!使いたい!!」
「じゃあ、ちょっと・・・そこのゴミ箱とティッシュペーパー取ってもらえる?」
「え?これと・・・これ?が、なんだよ?」
「・・・ ・・・ ・・・ハックショイ!!!!(鼻をかむ。ティッシュを丸めてゴミ箱に捨てる。)
ありがと。」
「で?教えてくれよ。俺の特殊スキル!」
「特殊スキルなら、たった今使いましたよ?」
「はあ?」
「ケンちゃんは、お兄ちゃんにゴミ箱とティッシュを取ってくれました。それにより、
お兄ちゃんが動く必要がなくなり、エネルギーの消費を抑えることに成功しました。」
「・・・ ・・・はあ?」
「お兄ちゃんが笑顔になる、特殊スキルです。今ここではケンちゃんしか使えませんよ?」
「にいちゃん、本当にごめんね?アイフォンで殴っていい?」
「えー。素敵なスキルなんだけどなあ。」
「そういう事じゃないことくらい話の流れで感じろ!!」
[異世界の真実、兄が語る現実]
「じゃあ、逆に聞きますよ?特殊スキルって、例えばなんですか?」
「え・・・例えば・・・空を飛ぶとか?」
「それは普通の魔法ですよね?特殊スキルじゃないです。」
「じゃあ、あれだ!強いモンスターを手懐けることができる!」
「あーそれだとねー。なんというか・・・ありきたりすぎて埋もれちゃうんだよね。」
「はあ?」
「その能力だと別に向こうだと珍しくもなんともないんだよねー。全然『特殊』じゃないんだよねー。
そんな能力身につけたって、向こうだと『ふーん。で?』って感じだね。」
「ほんとかよ!」
[異世界の真実、兄が語る現実]
「本当ですよ?異世界って今、パワーインフレ状態なんですよ。その能力もしくは似たような能力をお持ちの方、2、30人リストアップしましょうか?」
「じゃあ・・・相手の能力をコピーする能力!!」
「見た見た。珍しくない。」
「じゃあ、じゃあ、時間を止める能力!」
「居た。500人は見た。」
「じゃあ・・・相手を意のままに操る能力。」
「それは、もはや異世界にいかなくても現実世界でも使える人いますよ?」
「念じればゴールドが降ってくる能力!」
「使ってたー。おかげで大陸はゴールドの価値が無くなっちゃいました。」
「俺だけなぜかモテまくる能力!」
「モテた後の話聞くと、そんなにいいもんじゃないですよ?」
「ラスボスと仲間になる能力!」
「臭いよ?あいつ。」
「たいせー。オイ、たいせー。」
弟の健成は、兄の大成に肩パンをした。健成は論理が行き詰まるとこの癖が出る。
「異世界で凡庸になる現実を受け入れたら、また話をしにきなさい。お兄ちゃん、ディスカバリーチャンネル観るから。」
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