第44話



その場でしゃがみ、ぼんやりと空を見て過ごすこと40分。



ガチャ、とドアノブが回され、ボーイらしき男性が出て来た。






「あっ、あの…」


「ん?誰?働きたいの?」


「あの、違くて、その…中森さん、は…」


「え」






あ…。

こういう時は源氏名というもので言うべきだっただろうか。



でも、私は中森の源氏名を知らない。


どうしよう…と困っていると、ボーイが先に口を開いた。








「……あの人、昨日やめたよ」


「え…」


「理由はわからないし、どこ行ったのかも知らない。

店の人も店長も知らないみたいだけど」


「そう、ですか…」








借りたお金をどうやって返そうか。

それより、きっと昨日のことが原因だ。


私を逃がしてくれたのた、中森は…。







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