第42話



大丈夫ですか?と声をかけようとしたのを、中森の手に止められた。


そのまま中森の手が後ろに組まれ、何かを書いている。




私は何かを書いているその指に手のひらを当て、何を言おうとしているかを読み取ろうと意識を集中させた。









《は、し、っ、て。

は、や、く、こ、こ、か、ら、に、げ、て》









読み取れたので、手のひらを離した。

でも、意味がわからず動けない。



ガッと手を掴まれ、何かを握らされる。


1万円札5枚だった。







そのままその手に押される。

中森は相変わらず青い顔で必死に笑みを作り、目の前の男と話をしている。




意を決し、足音を立てないようにして路地の奥へ走り出した。












このお金は、いつかちゃんと返そう。










そう、思いながら。







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