第15話
──バタン。
玄関のドアが閉まる音がした。
部屋の外からはすすり泣く声。
他の声はしない。
貴都と藤也が外に出たらしい。
出て行っていいかわからないが、喉が渇いた。
水をもらいに行こうと起き上がり、ドアを開けた。
「あ…… 」
扉を開けると同時に樹と視線が交わる。
目を赤く腫らした樹は、私が起きていると思っていなかったらしい。
「ご、ごめんねぇ〜?うるさくて、寝れなかったよねぇ」
樹はにこりと笑みを向けて、止まらない涙を誤魔化す。
楽しくもないのに笑って、泣きたくないのに涙が出て、叫びたいのに叫べない。
苦しい、助けてと言いたいのに、言うことができない。
人間とは、そんな矛盾の正論で成り立っているのだ。
そしてそれこそが人間の決定的な欠陥であり、
それこそが人間の完璧な姿だ。
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