誰かワタシを買ってくれませんか。

こうの なぎさ

アイガホシカッタ。

ダレカ、ワタシヲミツケテ。

雨が降る歌舞伎町。

17歳の私がここに立っているのは

母親が家に男を呼んだから。

逃げてきた。




誰か、私を買ってくれませんか。





雨の中、今日も相手を探す。


「4万か」


今日、私を買った人は4人。


4人相手にして、4万は少ない。







今日も歌舞伎町に立つ私。


「おねーさん、可愛いね


自分こーゆーものなんだけど」


と、渡されたのは名刺。


「AV…ですか?」


「君なら売れると思うよーやってみない?」





お金が欲しかったし

興味本位もあった。


ワタシはその世界に足を踏み入れた。







23歳のワタシはいつの間にか

売れっ子。と呼ばれるほどのAV女優になっていた。



1本撮るごとに50万近くは貰っていた。




もうあの母親はなにをしているのか

知らない。





ワタシはこの世界で勝ち上がっていく。

そう決めていた。



ワタシの動画は売れに売れて

色んなサイトにも出回っていた。






もう雨の中、歌舞伎町に

立っている弱いワタシじゃない。



ハジメテなんて

ダレとしたかなんて覚えてもいない。




お金のためだけに生きているワタシ。





整形をしてエステにも通って

全身脱毛もして


「商品」としての自分を磨く。






ここがワタシの居場所。

蝶々、そんな綺麗なもんじゃない。


きっと、お金に群がる甘い蜜を吸う

光に飛び散る蛾。


それでいい。






ワタシの人生を否定させない。



これでよかった。



家に溜まったお金を数える。


「5000万…」




ベランダにたつ。


お金があっても本当にほしかったものは

手に入れれてなかった。


「愛」


それならいっそのこと、




自由に飛べる翼がほしい。

この世界がすべてだと思っていた。





空を飛びたい。




翼がほしい。


アナタの翼をワタシにください。




あぁ 失敗だ。



ニセモノの翼では飛べないことに

落ちていきながら気づく。




ダレカ、ワタシヲアイシテ



愛が欲しかった彼女の終わりは

ニセモノの翼では飛べなかったこと。





空は茜色に染まっていく。




彼女の血液と同じように。

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