第11話恋心
家に帰るともう高坂が晩御飯の準備を始めていた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
「授業どうでしたか?」
「ずっと校長先生に捕まって受けられなかったよ」
「そうですか」
「若者の恋バナ程面白いものはないとか言って、俺に恋バナしろって言いやがってもう本当に大丈夫かって思っちゃったよ」
「それは大変でしたね、それから学校から先ほど電話があり明日朝早めに学校に来てくれとのことでした」
「仕事の話だろうな」
「そうですね」
「校長どこまで話すんだろうな」
「さあ、でも詳しい詳細話すと殺されちゃいますから」
「そうだな」
二人で笑ってしまった。
「笑い事じゃないんだけどな」
「まあいくら何でもやりすぎだけどな」
「それほど心太様は世界から必要とされているんですよ」
「それにしても過保護だろ」
「貴方を失えば、サマエルそして神鹿狼奈はどうするんですか?」
「まあ自分で言うのもなんだけど変わりはいないよな」
「分かっているならいいんですけど」
「さあご飯が冷めてしまいますので食べちゃいましょう」
「分かった」
そうしてご飯を食べてお風呂に入り部屋に戻る。
「さてと、明日も早いしちょっとだけにしようか」
そう独り言をいいパソコンを開き。そしてサマエル、マラクの事件を確認する。
SNSを始めネットニュースから様々な所から情報を見ると、今朝、海外で起きた爆破テロなど今でも活発に活動をしている。
それを見てなんとも言えなくなる、でもこれを全て止めようとするのは不可能である。
朝起きたら四時だった、昨日は二十二時に寝たので六時間寝たので良く寝た方だった。
二度寝するもの良かったが今日は早起きして水でも飲もうとリビングに降りたらベランダで河上君が煙草を吸っていた。
「はー」
「おはよう」
「ん?」
「なんだ起きたのか、早いな」
「昨日は早く寝たからもう充分寝たよ」
「そっか」
「河上君は早起きなの?」
「いや四時間は寝られたな」
「四時間?」
「うん」
「寝不足じゃない?」
「まあ睡眠薬を飲むようになって一日三時間は寝られるようになった」
「ショートスリーパーってやつ?」
「まあそうかもな、でも寝ても嫌な夢しか見ないからな」
「どんな夢?」
「友達が殺される夢だ」
「友達が」
「ああ、昨日笑顔で隣を歩いてきた人間が明日会えるとは限らない事を毎晩突きつけられる。だから夜は嫌いだ」
「河上君って時々凄くダークな一面見せるよね」
「そうか?」
「うん、それに煙草吸っていたんだね」
「まあな」
「かっこいいとか思っているの?」
少し意地悪な言い方だったが回答は意外だった。
「かっこいいか」
「うん、皆未成年者で吸うのってかっこいいからだと思ったけど」
「まあれっきとした商品だし買ったならその人がどう使おうが自由だろ」
「じゃあ河上君も?」
「いや、俺は忘れない為かな」
「何を?」
「俺が吸うようになったのは海外に行った後だからもう一年になるな」
「一年、結構長いね」
「そうだな、この煙草は俺の人生の師匠が吸っていたんだ」
「師匠?」
「うん、まあ色々あって荒れていた時期で、人と離れようとしても必ず傍にいて、いれなくても誰かしら俺の傍にいるように仕組むような変わり者でな、その人が俺に教えてくれた事そして引き合わせてくれた人達を忘れない為に吸ってるんだ」
「引き合わせてくれた人ってどんな人?」
「親友とかかな」
「親友?」
「うん、たった一人の親友だ」
「確かに河上君の親友務められる人って少なそうだもんね」
「馬鹿にしすぎだろ」
「ふふ、でも良いな」
「何が?」
「今の河上君私たちが出会ってから一番楽しそうだよ」
「良くないよ」
「なんで?」
「過去が一番楽しいって思うって事は、それは良いことではあるけど結局過去に囚われている事に変わりはないから本当は今、そして未来が一番楽しくないと駄目なんだ」
「今と未来か、私はあんまり考えられないな」
「それはそれでいいんじゃないか?」
「え?」
「未来なんて自分の思うように行かないものだ、だからこうなったらいいなって言うそう言う曖昧なものでいいんだよ、それに何もなくても朝起きて学校や仕事に行って家に帰るだけでも本当は幸せな事なんだよ」
「それが辛くても?」
「うん。例え辛くても明日を迎えられるのは普通な事じゃないし、普通が一番幸せな事なのを理解できない事が一番良くない事だよ」
「なんだか河上君って達観しているよね」
「そうか?」
此処で一番疑問だった事をぶつけてみることにした
「河上君と私って二年前に合っているよね?」
「そうだっけ?」
「そうだよ、電車で助けてくれたじゃん」
「ん-」
あんまりピンと来てない太一君を少しだけうんざりしてしまった。
「その顔、俺に嫌気がさしたって感じだな」
「顔に出ていた?」
「まあ観察が趣味なもので」
「いい趣味しているね」
「まあちょっと待て、思い出すから」
「いいよもう」
「悪いな」
なんだかさっき河上君に対して感じていた嫌な感覚を忘れさせるくらいに河上君の顔が反省の色を見せていた
「そんなに思いつめなくても」
「いや思い出せない俺が悪い」
「もういいって」
「聞かせてくれ」
「なんでそこまで」
「以前の自分を知りたい」
「どういう事?」
「俺は十五歳の前の記憶が欠落している」
「え?」
「ようは記憶喪失ってやつだ」
意外過ぎるカミングアウトに驚いてしまい上手く口が動かない。
「そんなに驚くことじゃないだろ」
「びっくりするよ、記憶喪失だなんて」
「まあ思い出せないだけだから」
ここ数日驚きに連続で疲れる。
「高校一年の夏に痴漢に遭ったの、それを河上君が止めてくれて」
「そっか」
「でも見違えたよ」
「何が?」
「だってこんなに屈強で強くて、あの時はひ弱で痴漢野郎を掴む手が震えていたし」
「そうか、まあ海外に行ってからは鍛えたし、今の俺ならぼこぼこにしていただろうな」
「そうだね」
その時リビングに電気が付いた。
「お二人とも熱いでしょ今ジュース淹れますから入ってください」
「ほーい」
リビングに戻って高坂さんがジュースを淹れてくれた
「ありがとうございます」
「心太様も」
「うん、さんきゅ」
「河上君」
「ん?」
「ありがとうね」
「何が?」
「いや、お礼言ってなかったし」
「おう、じゃあ見返りとして恋バナでも聞かせてもらおうかな」
「え?」
「恋バナですか、いいですねー」
「良くないですよ」
「いいじゃん」
「河上君は海外に行って良くない成長をしたんだね」
河上君を睨んでしまう。
「まあまあ、いいじゃないですか」
「良くないですよもう!!」
「日向君?」
「え?」
意外な一言に驚いてしまう
「図星だな」
「いいですねー」
「ちょっとそう言うのじゃないから」
「顔真っ赤だぞ」
「朝から脅かさないでよ」
「分かりやすいのが悪い」
「私が悪いわけ?!!」
「そんなに怒らないで下さいよ」
「高坂さんまでそんなこと、もう知らない!!」
二階の自分の部屋へと逃げ込むように入る。
一方、河上と高坂は談笑をしていた
「ちょっとからかいすぎたんじゃないですか」
「そうかな」
「目使ったんですか?」
「まあ」
「こんな事で使わないで下さいよ」
「安藤に使ったわけじゃない」
「え?」
「霞はまだ戻らないのか?」
「はい、もうしばらく海外ですね」
「あいつが戻って来てくれたら幾分かましなんだけどな」
「ボディーガードですか」
「ああ、女子特有のお店とかに入られても近くに居られるからな」
「でも格好がね」
「メイド服以外着ないからな」
「そうですね」
「そろそろ学校行くぞ」
「はーい」
「遅いぞ」
「女の子には時間がかかるんだよ」
「何に時間かけているんだよ」
「メイクとか髪とか」
「メイクは校則違反だろ!!」
「うるさいな」
なんか最近本当に騒がしくなった気分だった、今まではメイクとかしていても学校で注意されるだけだったのに今は家でも怒られるのがなんだか嫌でもありながら嬉しかった。多分自分を家に居るという存在感があるのが嬉しいだと自分では納得させた。
「もう時間やばいって」
「分かってる」
「じゃあ高坂さん行ってきます」
「お気を付けて」
家を出て電車に乗りながらさっきの事を話す。
「あのさ?」
「なに?」
「学校で変な噂流さないでね」
「変なってなに?」
「だからその」
「ああ、あの恋バナか」
「だから好きとかじゃないから」
「本当か?」
「だからそう言っているじゃん」
「もう言わないから機嫌直せよ」
「分かっているならいいけど」
私は自分で日向君に対する考えが少し変わった気がした。
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